ここがヘンだよ、ニッポン企業 第16回

「ビッグモーター」の不正に学ぶ、超えてはいけない一線とは

ビッグモーターの不正が次々と明るみになっている。なぜ同社は足を踏み外してしまったのか。今回の件から日本企業が学べることとは。

ビッグモーターには「前兆」があった

実は今回の不正には「前兆」があるのだが、それがあった時期というのが、まさしくビッグモーターが「過剰な拡大路線」に舵を切って、現場が大いに混乱したタイミングと見事に重なっているのだ。
 

1976年、山口・岩国市で創業したビッグモーターは2000年代初頭から全国進出に本格的に乗り出した。ただ、それが2012年ごろから「勢い」がおかしなことになっていく。
 

2010年には年間で2店、2011年も2店と堅実に出店をしていたところ、2012年になるといきなり7店になり、2013年には17店、2014年は25店、2015年には37店と右肩上がりで出店攻勢が始まる。そして2016年にはなんと97店というすさまじい数をオープンさせるのだ。
 

ビジネスをしている人ならば誰もが思い当たる節があるだろうが、身の丈に合わない計画、無謀な拡大戦略というのは必ず後で問題が起きる。現場への過剰なノルマ、精神論、根性論への傾倒など、さまざまな「ゆがみ」をもたらすことで、ブラック労働やモラルハザードの温床になるからだ。
 

ビッグモーターの場合、それは「罰金」だった。97店舗オープンという過剰な拡大路線をした2016年の年末、『産経新聞』がこんな話をスッパ抜く。
 

「自動車保険の契約について月間目標額が定められ、目標を下回った販売店の店長が、上回った店長に現金を支払う慣行があることが3日、同社への取材で分かった」(2016年12月4日付 産経新聞

記事によれば、目標を達成できなかった店長は上限10万円をポケットマネーで支払わされ、目標を達成した店長たちに分配されるという。しかも、注目すべきはこれが5年前(2011年)から会社内でオフィシャルに行われていたということだ。
 

「月1回の会議終了後、経営陣が退席した後にその月に実績上位だった店長が仕切り役となり、本社の保険部署から配布される表に従って分配を実施。現金は店長が個人負担するという」


この「罰金」ともいうべきペナルティ制度が、全国進出が本格的に加速していく中で、シビアな目標を達成させるために導入されたのは容易に想像できよう。では、それがなぜこのタイミングでマスコミに報じられたのかといえば、やはり「97店舗オープン」という常軌を逸した拡大路線が要因だろう。
 

>次ページ:当時からSNSなどでは話題に

 

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