ヒナタカの雑食系映画論 第28回

出演者の犯罪・不祥事で「映画が公開中止になる問題」を考える。「作品に罪はない」だけでいいのか

市川猿之助の逮捕の波紋が広がっています。このことに限らず、犯罪や不祥事による映画の公開中止・延期の判断がされることが多い今、その「線引き」がどこにあるのか、考えてみます。

三谷幸喜も苦言。配信作品の「過剰な自粛・封印」もまた問題に

その上で気になるのは、すでに配信・販売済みの作品の過剰な自粛です。

市川猿之助が出演したNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は「NHKオンデマンド」で配信停止となりました。ほかの大河ドラマの場合も、出演者の中村俊太が大麻取締法違反で逮捕されたためか『新選組!』は配信そのものがされていませんし、前述した新井浩文が出演した『真田丸』は配信停止に。このことは、3作品の脚本を手掛けた三谷幸喜も苦言を呈しています。

過去には、2014年発売のBlu-ray・DVDボックス『宮崎駿監督作品集』で、CHAGE and ASKAの楽曲をモチーフにした短編作品『On Your Mark』の収録を、発売直前にASKAが覚せい剤取締法違反などにより逮捕されたために断念。しかし、購入者の中から希望者のみに非売品のソフトを配布する変則的な措置が取られました(現在『On Your Mark』は2019年の発売のBlu-ray・DVDソフト『ジブリがいっぱい SPECIAL ショートショート 1992-2016』で鑑賞することができます)。

あくまで個人的な意見ですが、配信やソフトで提供されているドラマや映画は、受け手が「見ない」という選択をすることができます。出演者や関係者が犯罪や不祥事を起こしたからといって、すでに世に出ているものを封印する必要はあるのかと、さすがに疑問に思うのです。

一方で、地上波放送がされるドラマやCM、はたまた映画のプロモーションは、不祥事や犯罪を知り嫌な思いをしている世間一般の人たちが、意識しなくても見てしまうもの。何より、被害者も目にしてしまう可能性があるため、自粛はやむを得ないでしょう。
 

作品を楽しむ“受け手側の意見”がやはり重要に

「作品に罪はない」と言うことは簡単ですし、実際にその通りだとは思います。しかし、それでもなお、社会全体で許容されてはならない犯罪は存在します。一方で、過剰なキャンセルカルチャーもやはり問題となるでしょう。

その判断を最終的に行うのは送り手側ですが、作品を楽しむ“受け手側の意見”がやはり重要になります。当初は予定通りに公開予定だった『ハザードランプ』が公開中止の判断へと転じたのも、明らかに世間から批判の声が強かったためでしょう。一方で、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の予定通りの公開や、伊勢谷友介の映画への復帰は、許容する声を踏まえたものでもあるはずです。

重要なのは「作品そのもの、関わった人たち、エンターテインメント業界、そして被害を受けた方にとって、より良い選択は何か」を考え続けることでしょう。その上で、何よりも不祥事と犯罪そのものが起こらないこと、それが隠蔽されないことを願ってやみません。


この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「日刊サイゾー」「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の魅力だけでなく、映画興行全体の傾向や宣伝手法の分析など、多角的な視点から映画について考察する。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。


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