日本はどうか
日本のLGBT理解増進法ではまだここまでの広い議論にはなっていないが、異性を警戒させるトランスジェンダーについては、全ての国民が安心できるよう気を付けるとしている。
日本政府はこの点について、「(LGBT理解増進法は)あくまで理念法であり、法律の施行によって従来の取り扱いが変わるものではない」と答えている。つまり、男性がトランスジェンダーだと主張して女子トイレや女風呂に入ることはないと考えていい。
そもそも筆者はLGBTを否定するつもりは毛頭ない。ただトイレの問題や、女子スポーツ大会に男性だったトランスジェンダーのアスリートが参加して賞を総なめにするといった事態はあってはならないと考えている。
別の差別を生まないために
性自認であるLGBTへの理解を推し進めるために、科学的に区別された男女が権利を失うことは、また別の差別を生むことになりかねない。政府は、改めてこの問題をきちんと議論する必要があるだろう。
この記事の筆者:山田 敏弘 プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」