選挙、芸能界の裏側をのぞき見できる
豪華な俳優陣もさることながら、『離婚しようよ』の魅力は宮藤さんと大石さんの脚本にあります。今回は、交換日記のような形で脚本を仕上げるスタイルを取り、互いの良い部分を引き出しながらシナリオを制作。これまで数多くの人気ドラマを作った2人が、タッグを組んだということだけでも、このドラマを見る価値は十分にあります。
一癖あるキャラクターたちの秀逸なセリフも面白く、会話のテンポが良いので飽きさせることなく最終話まで見ることができます。また、宮藤さんの代表作であるNHK連続テレビ小説『あまちゃん』をモジッた『巫女ちゃん』が登場するように、気の利いたギャグを連発。キレの良い毒舌で何かにつけて大志を攻撃するゆいや、何も考えていなくすっとんきょうな発言や考えを繰り返す大志をチャーミングに描いています。
離婚の描き方も斬新です。互いに一致団結して離婚という目標を果たすというストーリーは、新しいドラマの形を生み出しています。離婚といえば憎しみ合いながら、互いをけなして別れるのが普通。しかし、大志とゆいはどこか許せる部分が芽生え「なんで離婚するんだっけ」と悩みながら、それでも離婚に突き進んでいきます。
また、選挙を取り扱う中で、地方が抱える問題などもしっかりと見せていきます。選挙を戦うことになる大志のライバル・想田豪(山本耕史)も、元キャスターで高圧的という本当の政治家にいそうな設定。われわれが思うような、うさんくさくて人間味あふれる政治の世界もきちんと描いています。
本作はタイトルが『離婚しようよ』でありながら、選挙が物語の後半でメインテーマになっていきます。選挙に熱狂する人、人生を狂わされる人、魅力に気付く人などこの作品を見ると、「選挙って面白そうだな」と感じられる構成になっています。
単なる夫婦の離婚ドラマではない
離婚と選挙という、何の関連性もなさそうな出来事が、『離婚しようよ』では奇跡の融合を果たしていくことになるのも見どころの1つ!
また、ゆいを通して芸能界の仕組みを垣間見ることができるのも魅力です。政治、芸能界という多くの人が興味ある分野の裏側をのぞきながら、離婚する2人の人間模様をタップリと堪能できます。
単なる夫婦の離婚ドラマではなく、いろいろな知的好奇心を揺さぶってくれる『離婚しようよ』。これから結婚を考えている人にも、離婚を悩んでいる人にもぜひ見てもらいたい作品です。
この記事の筆者:ゆるま 小林 プロフィール
長年にわたってテレビ局でバラエティ番組、情報番組などを制作。その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。