映画料金の値上げは日本だけでなく、世界的な問題?
むしろ問題なのは、「何もかもが高騰していく中で映画館の料金も値上がりしてしまった」という、日本社会そのものの問題なのかもしれません。後述もしますが、娯楽があふれている今の世の中では、たった100円の値上がりであっても「映画館で映画を見ない」選択肢が増えてしまうことも危惧すべきでしょう。また、日本はほかの国に比べて映画館の鑑賞料金が高いともよく言われていますが、アメリカでは場所によって料金がまちまちです。1000円程度の地域がある一方、シカゴでは一般料金が約1500円ほどと言われており、日本と大きな差はなくなりつつあります(※1)。
韓国でも一般料金が約1500円、IMAX3Dでは約2500円で、コロナ禍以前の2018年頃と比べると、なんと約500円近くも引き上げられているのだとか(※2)。映画館の鑑賞料金の値上がりへの懸念の話題は、日本だけではないのです。
映画料金を配信サービスの月額料金と比較すると……
それでも、映画館で映画を1本見るだけで2000円は高いと思う人が多いのは事実。家族で映画館に行けば(子どもや学生の割引料金があるとはいえ)その人数分の料金がかかりますし、ポップコーンやジュースなどの値段も踏まえれば、さらにお財布に厳しくなってしまいます。そして、今では定額見放題の配信サービスも台頭しています。1カ月間にわたって映画が見放題でありながらも、その月額料金はおおむね映画館でたった1本の映画を見るよりも安いのです。
ここで、代表的な配信サービスの月額料金を見てみましょう(2023年5月17日現在)。
・Amazonプライムビデオ:500円
・Netflix:ベーシックプランは990円、 スタンダードプランは1490円
・Hulu:1026円
・Disney+:990円
・U-NEXT:2189円(ただし1200円分のポイントが毎月還元される)
音響が優れ、大きいスクリーンで、不特定多数のみんなで見る喜びを共有でき、最新の映画を楽しめる映画館という場所の価値は揺るぎないのですが、やはりこれらの配信サービスと比較しての割高感は否めず、配信サービスの利用者が「映画館で映画を見ること」そのものに慎重になるのも致し方はないでしょう。
懸念はやはり「二極化」「格差」
その上で、やはり懸念となるのは、「原作が大人気な映画だけを見る」「みんなが見ている映画だけを見る」といった「保証された映画」だけに観客が殺到する「二極化」をさらに招きかねないことです。コロナ禍を経て、日本だけでなく世界的にもその傾向が顕著になってきており、小・中規模の映画や、オリジナル企画の映画が苦戦を強いられがちな厳しい現状があります。たった100円の値上げであったとしても、映画館で見る映画の格差をより広げてしまいかねないと、どうしても心配してしまうのです。
この2023年のゴールデンウィークでは『名探偵コナン 黒鉄の魚影』や『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』などの超大ヒットにより各シネコンは歴代最高と言える大盛況となりましたが、依然として厳しいのはミニシアターです。つい先日にも、名古屋シネマテークが7月28日での閉館を発表しました。
「映画館で見たい映画」には、どうしても大迫力のアクションや大スケールのスペクタクルが展開する大規模公開の作品が挙がりやすいですが、筆者個人は抑制の効いたヒューマンドラマこそ、集中できる映画館で見たいと思えます。そうした優れた作品を変わらず提供してくれるミニシアターを利用する映画ファンが、少しずつでも戻ってくる、増えることを願ってやみません。
>次のページ:実は知られていない、映画館のチケット料金を少しでも安くする方法