日韓関係はどうなるか
日本から見れば、日韓関係が改善されることによるマイナス効果はあまりない。関係が悪化していたムン政権時でも、日韓の文化的なつながりは続いていたし、韓国系エンタメの根強い人気も衰えていない。
もちろん言うまでもなく、日韓は竹島について領土問題を抱えている。さらに、2018年のレーダー照射事件などの遺恨もある。また、徴用工問題は今もくすぶっているし、慰安婦問題や福島原発の処理水放出への抗議活動も行われている。
韓国側のメディアでも最近、処理水放出や慰安婦問題を北朝鮮のスパイ工作員が水面下であおり、抗日運動などを活性化させようとしている動きが明らかにされた。そして、そうした工作員が逮捕されるケースも起きている。
こうした動きに感情的な反応が日本でも起きるのは仕方がないことだが、それも踏まえた上で、現実的なアプローチをしていくしかない。
中国が韓国への「ネガティブキャンペーン」を開始
さらに今、中国政府は日米と関係改善を進める韓国への「ネガティブキャンペーン」を始めている。ユン大統領の訪米でバイデン大統領と合意した「ワシントン宣言」に対する反発は大きく、近く韓国に対する経済制裁を科す可能性があるともいわれている。
中国は、日米韓の関係悪化を望んでいるようにも見える。その場合には、日韓とアメリカが経済面で協力し合える部分も出てくるはずだ。
ユン大統領には、まだ4年以上の任期が残っている。そして日韓の接近は、現在の国際情勢と地政学を踏まえると国際的に日本の安全にもつながることは間違いない。日韓関係は今度こそ韓国内外の圧力を跳ね除けて建設的なものになることを願う。
山田 敏弘 プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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