韓国に対するアメリカの期待
筆者はムン前大統領の政権時に、米軍関係者との会話で出た話を今もよく覚えている。当時、同氏は北朝鮮寄りのスタンスで、韓国での米韓による共同の軍事演習を禁止にしていた。それに懸念を示したこの米軍関係者は、「訓練が行われないことは米軍としては許容できず、(有事が起きた際に)実戦で戦えなくなる」「在日米軍、在韓米軍、そして米軍が一緒に協力しなければ東アジアで米軍は最大限の力を発揮できない」と強い口調で語っていた。
これこそがアメリカの東アジア政策における、基本な考え方である。アメリカは、日米韓の米軍が1つになってこそ、北朝鮮や中国などの脅威から東アジアの安定は維持できるとの姿勢だ。
もっともユン大統領は、日米韓の関係改善を快く思わない中国も蔑ろにはしていない。例えば、2022年8月に台湾を訪問したアメリカのナンシー・ペロシ下院議長(当時)が、帰国前に韓国に立ち寄った際には、バケーション中であるとの理由で面会をしなかった。中国を不用意に刺激しないよう配慮したと見られている。
日本との関係は
3月にユン大統領が訪日し、5月7日からは岸田文雄首相が訪韓。お互い建設的に妥協を見せつつシャトル外交も復活し、関係改善をアピールした。アメリカでも、この動きを評価する声は多い。
ただし懸念点は、野党側から大統領にかけられるプレッシャーだ。これには野党が国会の過半数を占める“ねじれ状態”な韓国政治という背景がある。左寄りの野党は、反日活動をあおりながら、ユン大統領の支持を低下させようと動くことは間違いないだろう。
アメリカと日本は、そういうプレッシャーを跳ね返せるよう、ユン大統領と付き合っていく必要がある。日韓関係や米韓関係が悪化することによって、日米ならびに欧米諸国が脅威に感じている中国やロシア、北朝鮮を利することになってしまう。広い視野で中長期的に見れば、日韓関係の改善は日本の安定につながる。