4:『聖闘士星矢 The Beginning』
1985年から連載され、世界中でコアなファンを持つ漫画『聖闘士星矢』(集英社)の、満を持してのハリウッドの実写映画化作品です。特徴的なのは、主人公が異常な事態に翻弄(ほんろう)されたり、壮大すぎたりする設定に対して、「あんたらイカれてんのか?」「分かるように説明してくれ!」などとツッコミを入れる立場であること。ちょっと皮肉っぽいところがありながらも、生き別れの姉を探すことを第一に考えたりもする、感情移入しやすい主人公になっていました。
加えて、とある悩みを持つお嬢様と「恋人にはならないが、互いに強い信頼を得ていく」関係性にもなっています。彼女は、原作ではわがままな嫌われ者の立場でしたが、今回の映画では人当たりが良く、かつ主体的に考える精神的な強さも感じさせるキャラクター。男女が互いに守る守られるだけではない、対等であろうとする関係性は尊く、応援したくなります。
詳しくはネタバレになるので秘密にしておきますが、お嬢様の命を狙う敵との関係は、原作にはない今回の映画オリジナル要素。愛憎入り交じる物語としても工夫が凝らされていました。原作の熱心なファンからはさまざまな改変のために賛否両論を呼ぶかもしれませんが、水準以上の面白さがあるアクション映画として万人におすすめできます。堂々とハリウッド映画で主演を務めた新田真剣佑の格好良さを期待する人には、是が非でも観ていただきたいです。
5:『金の国 水の国』
2017年の「このマンガがすごい!」(オンナ編)で第1位を獲得した岩本ナオの同名コミックのアニメ映画化作品です。何より重要なのは、「おっとりした箱入り娘のようで実はたくましい、ぽっちゃり体形のお嬢さん」と「お調子者のようで実は聡明かつ誠実な、長身で三白眼の青年」の2人がとてもかわいいこと。そして「偽りの夫婦を演じるうちに愛が芽生えていく」過程が描かれていることでしょう。
初めは利害が一致しただけにも思える2人が、互いを心配したり、はたまた互いの魅力に気付いたり気付かされたりするのでニヤニヤが止まりません。白眉なのは「夜の橋の上」のシーン。この関係性で考え得る尊さを120%大放出してくれました。こうしたプリンセスもので、ふくよかな女性が描かれることが珍しいですし、だからこそのキュートさもいっぱい。対して真面目な青年の方が、完全にお嬢さんにほれている様子も大好きになれるでしょう。
『金の国 水の国』は現在ほぼ上映が終了していますが、7月12日にBlu-ray&DVD発売が決定しています。また2月の公開当時は、『レジェンド&バタフライ』『金の国 水の国』『タイタニック』と「政略結婚もの」が同時に劇場公開されているシンクロニシティがありました。その後の物語がそれぞれ全然違っていたりもするので、見比べてみるのも良いでしょう。
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