ここがヘンだよ、ニッポン企業 第11回

新人をフルリモートで放置する会社は近い将来「ブラック企業」と呼ばれてしまうワケ

新入社員をフルリモートで放置すると、長期的に見て「キャリアが死ぬ」――。そんなツイートが先日話題になった。実際の原因はどこにあるのか、「健康経営」の観点も踏まえ、フルリモートの是非を考える。

「通勤」は健康管理に役立つ

というのも、実は新型コロナウイルス禍になってから、「通勤」というものの健康管理効果が分かってきたからだ。ご存じのように、日本人は世界一長寿だといわれており、その要因についてはこれまで、「食生活のバランスがいい」「治安が良くて医療も充実」などが指摘されてきたが近年世界の研究者が注目しているのが「通勤」だ。
 

多くのサラリーマンは、通勤を「地獄」「時間の無駄」と忌み嫌っているが、実はこの時間は「歩く」「階段の上り下り」「満員電車でバランスを取りながら立ち続ける」というかなりしっかりとした運動をしており、それらは全て健康管理に役立っているのだ。
 

特に近年、命を縮めることが分かっている「座る」ということを長時間続けているデスクワーカーにとっては、「通勤」は健康管理のために欠かせない習慣だったのである。このあたりは拙稿「『Web会議のハシゴ』が働く人の心と体を壊してしまうワケ」(ダイヤモンド・オンライン)に詳しく解説しているので、興味のある人はお読みいただきたい。
 

このような話をすると、「だったらフルリモートをしながら自分でウォーキングをすればいいじゃないか」と思う人もいるだろうが、そういう自己管理ができない人が山ほどいるのが会社というものだ。
 

会社の中には「酒やタバコを控える」ということがなかなかできない人もたくさんいる。運動をした方がいいと頭で思っていても、忙しくてなかなかできない人もたくさんいる。だから同じ会社に勤めていても「健康管理」にバラツキが生まれる。
 

だが、「通勤」ならばそうならない。自己管理できようができまいが、自宅から会社に出勤することによって、健康管理のための運動をしてもらうことができる。そっちの方がメンタルヘルス的にもいいし、社員のコミュニケーションも密になる。良い事ずくめだ。

「通勤」が健康管理に(画像はイメージ)

日本の健康行政でも「通勤」を見直す機運は高まっている。ということは、「健康経営」の観点から、リモートワークや在宅勤務に関して、「週○日まで」という推奨ガイドラインが出される可能性もあるだろう。
 

オフィスに誰も行かず、フルリモートで働くような会社が、「古い考えにとらわれたブラック企業」なんてバカにされる時代が、もうそこまできているのかもしれない。
 


窪田 順生 プロフィール
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。



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