2022年10月、起業家のイーロン・マスク氏がツイッター(Twitter)社の買収を完了したことが大きなニュースになった。しかもそれに伴い、マスク氏は上層部の大部分を容赦なく解雇し、さらに約7500人いた社員のうち4800人ほどを解雇した。
アメリカではこうした突然の「クビ」は珍しくない。事実、同社のニュースの後にも、インフレや金融引き締めなどによる景気停滞の煽りを受け、かなりのアメリカIT企業が次々と社員の解雇を断行している。
GoogleやAmazon、Microsoftも
例を挙げると、2023年1月だけを見ても、グーグル(Google)の親会社アルファベット(Alphabet)が1万2000人、マイクロソフト(Microsoft)が1万人、セールスフォース(Salesforce)が7000人、アマゾン(Amazon)が1万8000人、ペイパル(PayPal)が2000人、スポティファイ(Spotify)が600人、スマートニュース(SmartNews)が120人を解雇すると明らかになっている。
2月には、ヤフー(Yahoo!)で1600人、デル(Dell)で6650人、ビデオ会議サービスのズーム(Zoom)でも1300人が解雇されると報じられた。元フェイスブック(Facebook)のメタ(Meta)も2022年に1万1000人を解雇、3月14日にはさらに約1万人の社員を追加削減すると発表し話題になったが、中小IT企業でもあちこちでかなりの人材が解雇されている。
突然の解雇が起きるアメリカでは、日本に比べて従業員を解雇しやすい土壌がある。ただ日本のように「希望退職者募集」をして、退職金などを提示して応募を待つような生易しい措置はなく、いきなり「明日から会社に来なくていい」という事態になる。
ちなみに新型コロナウイルス禍では、経済活動が大幅に制限されたことでアメリカ国民の15%が失業者になったといわれている。コロナ禍でも企業は従業員を容赦なく切ったのである。
ここまであっさりと正規職員を解雇できてしまう国は、終身雇用という文化がないアメリカ以外ではあまり聞かない。
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