グーグルもChatGPTに対抗するAIを開発
グーグルもChatGPTに対抗する「Bard(バード)」という対話型AIを開発しており、2月に発表した。だがその際の公開された動画で、「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による新発見で、9歳の子どもに教えられることは何か?」という質問に、「JWSTは、太陽系外の惑星の写真を初めて撮影した」と誤った回答をしたとして大きな話題になった。もっとも、ChatGPTもいろいろと回答の間違いは指摘されているので、この辺りは、AI対話型サービスの大きな課題である。
そのBardの元になっているのが、グーグルが開発してきた「LaMDA(ラムダ)」という対話型のAIだ。ところが、2022年6月に、当時グーグルのエンジニアだったブレイク・レモインという人物が、LaMDAとの会話に異常が生じないかをチェックする仕事をしていている中で、LaMDAが感情を持つようになったという気味の悪い主張をメディアに訴えたことで大きな物議を醸した。
参考記事:グーグルのAI「LaMDA」に“意識”はあったのか? AIに対して忘れてはいけない事実
グーグルはその話を完全に否定したが、シンギュラリティ(AIが人間の知能を超えることでAIが人類に影響を与えること)が話題なる中で、そうした「錯覚」をしてしまう人も少なくない現実をうかがわせた。AIをどう利用していくかについて、こうした議論が今後も続いていくだろう。
もちろん、AIのポテンシャルは大きい。例えば、米オンラインメディア「BuzzFeed(バズフィード)」は、記者180人を解雇。まずサイト内の一部サービスにChatGPTを使い、将来的には、記者もChatGPTに変わっていく可能性が指摘され、このニュースを受けて同サイトの株価が200%も上がったと報じられている。またNHKなども、シンプルなニュースでAI自動音声などを使うなど、活用が広がりつつある。
AIが“当たり前”に存在する世界になるか
今後AIには、人材不足を解消したり、仕事を効率化したり、コストを削減できるなどメリットがあるとして、間違いなくどんどん企業や社会に導入されていくだろう。長く注目されてきた人間よりも優れた高性能なAIが、当たり前に存在する世界に確実に近づいているということだろう。
山田 敏弘 プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
【おすすめ記事】
・グーグルのAI「LaMDA」に“意識”はあったのか? AIに対して忘れてはいけない事実
・「ChatGPT」のAI技術を統合! マイクロソフトの新「Bing」「Edge」はどんなもの?
・Googleの対話型AIサービス「Bard」とは? 社会はどう変わるのか
・強盗犯「ルフィ」も使用した通信アプリ「テレグラム」 実は強固な暗号化ではなかった?
・なぜアメリカは「TikTok」を警戒するのか、他のSNSとの違いは