ヒナタカの雑食系映画論 第9回

『すずめの戸締まり』の“まるで時刻表”な上映回数に賛否。大作の優遇は「仕方がない」ことなのか

新海誠監督最新作 『すずめの戸締まり』の「まるで時刻表」な上映回数の多さが批判の対象になりました。でも、実は「妥当」と言えるものだったかも……? 『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』などの例を鑑みて、分析してみます。※画像出典:(c)2022『すずめの戸締まり』製作委員会 /プレスリリース

ビックタイトル以外にも、目を向けるべき作品はたくさんある

それよりも大きな問題は、(『すずめの戸締まり』と『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』という)ビッグタイトルに多くのスクリーンが割かれた影響を受け、クオリティの高い作品の上映回数が減る、もしくは上映終了となる勢いが加速し、観られる機会が失われてしまっている事実でしょう。

個人的に特に「もったいない!」と思えたのは、絶賛の声が続々と届けられたにもかかわらず、公開2週目で多くのシネコンで1日1〜2回上映になってしまった、稲垣吾郎主演&玉城ティナ共演の恋愛ドラマ映画『窓辺にて』と、韓国の人気俳優マ・ドンソク主演のアクション映画『犯罪都市 THE ROUNDUP』の2本です。このタイミングでなかったら……と悔しく思うところもありますし、今からでも間に合うので、優先して観に行ってほしいと個人的に思うのです。
 
 

時には、ミニシアターに目を向けてみてもいいかもしれません。中には『すずめの戸締まり』を上映しておらず、その影響を受けていない劇場もあります。例えばテアトル新宿では『窓辺にて』が3週目でも1日4回上映と、とても観やすくなっています。
 

口コミでロングラン上映になる場合も。とはいえ、早く観に行こう!

また、シンプルに「観たいと思った映画は早く観に行ったほうがいい」ということも、お伝えしておきたいです。これまで書いてきたように、映画興行はとても厳しいもので、どれだけ優れた作品でも、公開初週に観客が集まらないとすぐに上映回数が激減、上映終了になってしまいます。

口コミで巻き返してロングランを記録したり上映館が増えることもありますが、それは近年では『アイの歌声を聴かせて』『ハケンアニメ!』『恋は光』など、ごくひと握り。逆に言えば、ロケットスタートと報道された作品こそ、長く上映されるのは確定的なのですから、後回しにしてもいいでしょう。

そして、朗報があります。実は前述した『RRR』は、公開5週目から川崎チネチッタ立川シネマシティで優れた音響のスクリーンでの上映が復活するなど、明らかに口コミを反映しての特別な措置を取っているのです。また、『RRR』の公式TwitterではIMAX上映の復活を予見させるツイートもされています。
 

公開初週の『すずめの戸締まり』は独壇場のような結果になりましたが、これから『RRR』の他にも伸びを見せる作品は出てくるでしょうし、数々のライバルとなる新作映画も待ち構えています。

さらには、『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(以下、MONDAYS)というインディーズ映画は、大評判の口コミを受けて全国10劇場での追加上映が決まるなど大躍進をしています。
 

映画に限らず、エンターテインメントの格差は近年より広がっている印象がありますが、ずっと1つの作品ばかりが優遇され続けるわけもありません。事実、『すずめの戸締まり』の上映回数は2週目で多くの劇場で3分の2程度にまで減っています。

他の映画を応援している人も、『すずめの戸締まり』を敵視しすぎるのではなく、より広い視野を持ってみてはいかがでしょうか。自分の好きな映画をSNSで紹介してみたり、身近な人におすすめしたり、自分で観たい映画を探すときにも口コミや作品の特徴を参考にしてみたり……。それでこそ、より幅広い種類の映画が観られるきっかけが生まれ、映画の多様性への一助になると思います。

そして、『RRR』はいいぞ。『窓辺にて』『犯罪都市 THE ROUNDUP』『MONDAYS』もぜひ観てみてください。


※記事内容は執筆時点(11月18日)のものです
※映画館の「座席数シェア率」は全てプレコグ調べです


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