交渉する余地は
そして病院などを襲うという行為も、そうした信用に傷がつく。「ビジネスパーソン」ではなく、やはり残忍な「犯罪者」であるというイメージがつくと、身代金を支払って本当にシステムが元通りになるのかが不安になるだろう。
「LockBit3.0」は、半田病院を攻撃したことを「申し訳なかった」と詫びていた。下っ端の仲間が勝手にやったことだったとし、もし今後、「Lockbit3.0」が病院を襲うようなことがあれば、無料で復号鍵を提供するとまで言ってきた。
今回の大阪急性期・総合医療センターのケースも、身代金を支払うか否かは別問題として、交渉する余地はあるのではないか。さもないと、患者の不安もさることながら、府立病院の復旧コストもさらに大きくなる可能性もある。その皺寄せが住民に来るのだということを考慮すべきではないだろうか。
山田 敏弘プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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