世界を知れば日本が見える 第7回

ロシアによる「見せしめ」か、領事「拘束」で否定できない日本側の“落ち度”とは

9月26日、FSB(ロシア連邦保安庁)が日本総領事館の領事をスパイ活動の容疑で拘束したと発表した。ロシアが日本で行っている数々のスパイ活動を考えると「お前が言うな」という話ではあるが、同時に日本側にも落ち度があった可能性も否定できない。それは……。

ロシアのやり口は「見せしめ」か

なぜこのタイミングだったのか(画像はイメージ)

領事や外交官は在外公館への勤務前に赴任前研修などを受けているが、拘束時の取り調べの対応などもきちんと訓練されていない。
 

もっとも、日本から見れば、ロシアの今回のやり口は「見せしめ」の側面が強く、この発表の翌日には安倍晋三元総理の国葬儀があったことを考えると、両国関係の緊張に伴って「タイミングを見計らったもの」とも見られている。
 

ウクライナ侵攻が続く中、特にロシアのような強権的な国では、邦人がロシアやその関係国で活動する際にはいつも以上に注意をする必要がある。もちろん今回強制退去になった領事もそれは分かっていたはずだろう。
 

さらに言うと、外交官などでない一般人であっても、何気ない不注意な行動で拘束されてしまう危険性もある。特に、街中で所構わず写真を撮影するような行為は、強権国家なら「軍事施設を撮影した」などと拘束されてしまう可能性があるので注意が必要だ。
 

とにかく、細心の注意を払わないと、中国やイラン、ロシアなどが行ってきたと批判されるように、日本人でも、外交などのカードとして使われてしまう可能性があるのだ。


山田 敏弘プロフィール

ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル

 

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