日本側の問題点は
今回問題になった領事は、ロシアから「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからぬ人物)」と宣告され、48時間以内の国外退去を求められた。ただ目隠しされたまま身動きが取れない状態で連行されて威圧的な態度で取り調べを受けたことで、日本政府はジュネーブ条約違反として厳しく批判している。
林芳正外務大臣はこの動きを受けて、10月4日に在札幌のロシア総領事1人を国外退去させると発表した。
米ワシントン・ポスト紙によれば、これまでに少なくとも400人のロシア人が欧州だけで「ペルソナ・ノン・グラータ」と宣告されるなど、国外通報処分になっている。逆にロシア側も、フランスやドイツ、スペインなど、これまでも「国外追放」合戦を繰り広げている。
ただ今回の日本のケースはそれらとは一線を画している。まずスパイを取り締まるFSBが、個人名のみならず、取り調べや帰国時の領事の映像や画像も公開し、ロシアメディアをはじめ、大々的に報じた。政府関係者からは、「あそこまで大々的にメディアで顔をさらすのはやりすぎ」との声も聞かれる。
しかも、ロシアは日本でもスパイ活動を長年行ってきた歴史がある上、近年もロシア通商代表部に所属しながら活動していたスパイ機関の諜報(ちょうほう)員がソフトバンクの元社員から情報を受け取ったケースが2020年に摘発されている。
読売新聞が2022年7月に「在日ロシア通商代表部(東京都港区)の男性職員が、国内の複数の半導体関連企業の社員らに接触しているとして、警視庁公安部が企業側に注意喚起を行ったことが捜査関係者への取材で分かった。公安部は、企業の技術情報を盗もうとしたスパイ活動の可能性があるとみている」とも報じている。
ただ通商代表部の職員は、ロシア外交官の肩書で来日しているスパイ機関諜報員であるために、日本側としては手も足も出ない。取り調べすらできないまま、スパイの帰国を許してきた。しかも何もできない日本を小ばかにするように、帰国したスパイの代わりとして同じスパイ機関から別のスパイを送り込んでくるのである。
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