世界を知れば日本が見える 第5回

なぜ日本が標的に? ロシア系のサイバー攻撃集団「Killnet」の目的とは

行政情報のポータルサイトやニコニコ動画、東京メトロなども標的となった今回の攻撃。一体何が起きているのか、イチから解説していく。

キルネットとは? 日本人が関与している可能性も

そもそも、キルネットとはどういう組織なのか。
 

その活動は2011年から確認されている。そしてロシアによるウクライナ侵攻後の2022年3月から、親ロシアのサイバー攻撃集団としてロシアと対立している国々にDDos攻撃を行ってきた。今回攻撃を受けた日本のみならず、これまでにアメリカやイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、エストニアなどにも攻撃を行っており、ハクティビスト集団の1つとして知られていた。

親ロシア活動を宣言するキルネットのテレグラム投稿

8月にはアメリカ政府がウクライナに提供して活躍している高機能ロケット砲システム「ハイマース」を製造するアメリカの軍事企業ロッキード・マーチンにDDos攻撃を仕掛けたと主張しているが、同社は認めておらず、専門家の中にはその主張を疑う者もいる。
 

ロシアのサイバー攻撃集団は、情報機関が関与しているケースが少なくない。筆者が話を聞いた元CIA幹部も、ロシアの情報機関は、ロシアのサイバー攻撃集団を把握し、時に利用するなど運用しているとも述べている。キルネットも、ロシアの国内情報機関でウクライナも担当しているFSB(ロシア連邦保安庁)とのつながりが指摘されている。
 

メンバーの数や素性について詳細は分かっていないが、2022年7月頃までメンバーはほぼ全てロシア人だったと分析されている。ただ今回の日本への攻撃を見る限り、日本に詳しい人物がいるのは確かで、日本人も関与している可能性があるとの声もある。
 

さらに「Legion」というサイバー攻撃集団や、「Zarya」という集団などが協力している。こうしたグループのメンバーには日本に由来したようなグループ名を使っている者もいる。
 

Legionという組織はDDos攻撃をメインに行っているが、Zaryaはハッキングによって情報搾取などを行うスパイ工作も実施している。Zaryaは6月には、アメリカの政府機関のWebサイトを改ざんしたとも主張しており、各地でさまざまな攻撃を仕掛けているのが分かる。


次ページ:今後攻撃が増える可能性も

 

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