「あの子、死んだ?」と言い放った中3不登校女子に教えてあげたいこと

2022年8月20日、中学3年生の少女が東京都渋谷区の路上で面識のない母娘に重傷を負わせる事件が発生。「予行練習のため」「あの子、死んだ?」など、陳腐でキャッチーな少女の言葉に垣間見る「殺人や傷害がエンタメ化する時代」を、コラムニスト・河崎環が考察します。

 

殺人や傷害事件がエンタメ化する社会

もしかしたら、「またか」と思った人も多かったのかもしれない。事件当初、少女は「死刑になりたかった」との、もはやお決まりの文句を口にしたと報じられた。夏休みも終盤の8月20日土曜日、埼玉県戸田市の中学3年生の少女が、東京都渋谷区の井の頭線神泉駅近くの路上で偶然通りかかった面識のない母娘に包丁を振りかざして襲い掛かり、重傷を負わせるという事件が起きた。
 

事件の発生場所が円山町と聞いて、東電OL殺人事件を思い出す人ももちろんいただろう。人気のない暗がりの路地裏には、同じように負の感情を持った人間たちが溜まり、潜みやすい、ということなのか。あの土地には何かある、事件の怨念が孤独や寂しさを引き寄せた、などとうれしそうに言いたがる人もいるだろう。
 

この事件の極め付けは、目撃者の証言から、少女が路上に無抵抗で取り押さえられながらぼんやり空を見つめて言ったという「あの子、死んだ?」の言葉だ。マスコミ各社がすぐに「これだ」とタイトルに採用して配信したり放送したりするほど、何よりもキャッチーだった。
 

だが、何か事件があるたびにそういったエモくてキャッチーなものが人目を引き、容疑者側がそれを学習して期待に応えるかのように口にする、陳腐なドラマめいた分かりやすいセリフに「共感」する人々が湧く近年のパターンを、筆者は「殺人や傷害事件のエンタメ化」と感じて憂慮している。
 

>次ページ:「予行練習のため」「あの子、死んだ?」分かりやすくキャッチーな少女の言葉には……
 

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