いま、1月に入試が解禁される埼玉県などを中心に、2月本番を待たずに「1月までに全ての受験を終えて進学先を決める」家庭が増えているのです。
単なる併願やお試し受験にとどまらず、なぜ「1月合格・即終了」という選択が広がっているのか。激戦化する首都圏中学受験のなかで起きている保護者の意識変化とともに、埼玉・神奈川の最新動向からその背景を解き明かします。
首都圏トップクラスの伸び率。なぜ今、埼玉の中学受験がアツいのか
中学受験で今、注目されているのは埼玉です。東京・神奈川・千葉と比べると、県全体の私立・国立中学在籍率はまだ高めではありません。おおよそ6%前後です。ただし、伸び方は速い、と指摘されています。「上昇の具合は、やっぱり埼玉がトップです。かつては交通の便がよいこともあり、都内の学校を志望する傾向がありました。しかし今は、埼玉県内の私立中学の評判が上がり、県内志向が強まっています」(栄光ゼミナール入試情報センター責任者 藤田利通先生)
この数年、注目を集めた開智所沢に加え、都内から埼玉の私立中学へ進む例も増えています。ただし開智所沢自体の受験者増加率は、2026年入試では一段落した形です。代わって伸びが目立ったのが浦和実業や埼玉栄です。また、新設の浦和学院も募集120名に対してしっかりと志願者を確保しています。
1月の埼玉入試では、栄東や浦和明の星といった難関校に志願者が集まり、激戦が繰り広げられます。一方、埼玉の中堅校は、今のところ比較的入りやすい面もあります。難関校と中堅校の両方があることが、埼玉の私立中学の人気の背景になっています。
「栄東に受かったら都内は受けない」埼玉で急増する“県内完結”
この埼玉の地元志向で象徴的なのが、東京都との県境に近いサレジアン国際学園です。かつては埼玉県からの受験生が多い学校でしたが、今は都内の受験生が中心になってきています。埼玉側の受験生がより自宅に近い県内校を選び、県境の学校まで通わなくなってきているのです。「6年間通うので、できるだけ自宅から近い学校にしたい」という家庭の現実的な判断が見えてきます。
こうした動きは、特定の学校に限ったものではありません。大宮エリアでも、栄東に合格した時点で受験を終えるケースが明らかに増えています。
「県内で行きたい学校に受かったら、都内は受けなくていいと考える保護者が増えています」(栄光ゼミナール入試情報センター責任者 藤田利通先生)
その背景にあるのが、私立中学の手厚い指導体制です。放課後に学校へ残して宿題を見たり、遅れている生徒に先生から声をかけたりと、きめ細かなフォローが地元で評判を集めています。
このように放課後の勉強まで学校で完結できるのであれば、自宅から近い地元校を選ぶのが自然な流れと言えます。もともと中学受験をするつもりがなかった家庭でも、近くの私立中学の面倒見のよさを知り、「しっかり勉強を見てくれるなら、中学から私立に通わせよう」と踏み切るケースも増えています。
また、この地元志向は都心からの距離とも深く関係しています。東京に近いエリアほど都内進学への志向が残る一方で、大宮より北など都心から少し離れた地域では、地元志向がより顕著にあらわれます。
千葉県でも同様に、東京から離れた地域ほど地元志向が強まる傾向があります。
つまり埼玉や千葉では、県内の私立校が魅力を高めた結果、「中学受験」という選択肢自体を選ぶ家庭が増えているといえます。



