なかでも、東京都世田谷区の日本学園中学校・高等学校が「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」となり、中学入試の偏差値が約40から60オーバーへ急上昇したニュースは大きな話題となりました。
付属校バブルを加速させる大学側の裏事情
明治大学が系列校を新設するのは、実に42年ぶりのこと。MARCHの中でも屈指の人気を誇る明治大学が、今後は推薦入試を拡大する方針を打ち出しており、今回の系列校設置もその一環といえるでしょう。メディアやインフルエンサーは「これからは総合型選抜の時代だ」と盛んに発信していますが、実態として枠が拡大しているのは、指定校推薦と系列校からの内部進学なのです。
こうした状況下で、付属校人気を後押ししているのが「付属校こそ、しっかり勉強させて基礎学力をつける」という教育方針です。
実際、今どきの大半の付属校では学習指導に力を入れており、学校周辺には内部進学対策に特化した塾も目立ちます。
なぜ、こうした塾が繁盛するのか。それは、希望する学部への内部進学を勝ち取るための学内競争が、想像以上に厳しいからです。
例えば日本大学では、全付属校合同の一斉テストの結果で進学先の学部が決まるため、大手塾が専用の対策講座を設置するほどです。
もはや、付属校に入れば「イージーモードで遊べる」という時代ではありません。むしろ、学校で鍛えられるからこそ学力が伸び、結果として外部受験も可能な実力がついていきます。
付属校は「閉じた選択肢」ではなく、むしろ安全網(セーフティネット)を持ちながら難関へ挑戦できる「広い選択肢」になり得る場所なのです。
単に「楽をして大学へ行く場所」ではなく、しっかり学びながら必要に応じて外の世界へも羽ばたける。進路が狭まるどころか、内部進学という安心感を持ちながら挑戦できる——それが現代の付属校の実像です。 ゆえに人気が高まっています。
そうなってくると基礎学力が十分につくので、外部受験も可能になってきます。前回の記事で紹介したように、学校の制度としても、内部推薦の資格を保持したまま他の大学を受験することができるようになっています。
では、このように高い基礎学力を身につけた生徒たちは、具体的にどのような対策をして他大学受験に臨んでいるのでしょうか。
進学校か、付属校か。MARCH進学を巡る「偏差値の逆転現象」
MARCH付属校の生徒の大半が内部進学を選ぶのは、それだけMARCH以上の難関大、つまり早慶や国立大への進学が険しい道だからです。例えば、「推薦権を保持したまま国立大を受験できる」制度を利用する場合、不合格なら内部進学という道が残ります。
しかし多くの場合、この制度の対象は国立大に限定されており、早稲田や慶應などの最難関私大を併願するには推薦権を放棄しなければなりません。リスクを避けるため、結局は「国立一本か、内部進学か」という二択に落ち着くのが実情です。
中学受験においてMARCH付属校の難易度は非常に高く、塾関係者の間では「これだけの学力があれば、高校・大学受験で早慶を狙える。MARCHで進路を固めるのはもったいない」という声も聞かれます。
しかし、現実はどうでしょうか。四谷大塚の偏差値で60クラスの進学校であっても、ボリュームゾーン(中央値)の進学先はMARCHです。
一方で、例えば中央大学附属横浜中学校・高等学校の偏差値は57。つまり、付属校の方が低い偏差値で確実にMARCHの席を確保でき、さらに他大学への挑戦権まで得られるのです。
この「逆転現象」こそが、付属校人気の核心といえます。



