確かに、近年の大学受験では英語で求められるレベルが年々高くなっており、一般入試では英検準1級レベルの英語力が求められるケースが増えています。
しかし、これは受験の全体像を見た話ではありません。実は、総合型選抜や公募制推薦を活用すれば、英検2級でも早慶上智といった難関大学に合格する道があるのです。
その一方で、英語資格は評定平均値の不足をカバーする強力な武器にもなっています。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(杉浦由美子 著)より一部抜粋し、英語資格と大学受験の実態をご紹介します。
総合型選抜なら英語が苦手でもチャンスあり
親御さんが高校生の頃に比べて大学受験はハードルが下がっているといわれていますが、例外は英語です。英語だけはどんどんと求められるレベルが上がってきました。ある受験生のお母さまは、1999年に早稲田大学文学部英文科を卒業して、専門商社に入社したそうです。
「就活のために大学3年生の頃に必死で勉強をして準1級をとりました。でも、今、早稲田や慶應、上智の入試の英語は英検準1級よりも高い英語力を求めるんですよね」
実際、早慶上智ICUだと入学の段階で、英検準1級を持っているのは当たり前です。
一方で、総合型選抜や公募制は英語が苦手な高校生にとってお薦めな入試であります。総合型や公募制なら、英検2級で慶應ICU上智に合格している学生も毎年、それなりの人数がいるからです。
「ICUや早稲田の国際教養学部は英検1級がないと合格しない」「慶應や上智は準1級ないと合格しない」という塾もありますが、そんなことはありません。英語が得意ではない高校生でもチャンスがあるのが総合型選抜や公募制なのです。
英語力で評定平均値の不足をカバーする戦略も
一方で、英語ができれば、評定平均値が足りなくても総合型選抜で十分に戦えます。たとえば、明治学院大学心理学部教育発達学科の、ある年の総合型選抜の出願条件を見てみましょう。
1. 実用英語技能検定2級合格またはCSEスコア1980点以上
2. TEAP(4技能合計スコア)225点以上
3. GTEC(4技能合計スコア)930(960)点以上
4. 英語の評定平均値が4.0以上
5. 国語の評定平均値が4.0以上
6. 数学・理科・地理歴史・公民の4教科のうち、2教科の評定平均値が共に4.0以上
7. 全体の評定平均値が3.8以上
これらのどれかを満たしていれば出願ができるとあります。
つまり、評定平均値が足りなくても英語資格があれば出願ができるわけです。ほかでもこういったふうに英語資格試験を出願条件として定めている大学はしばしば見かけます。
ここで「英検2級は分かるけれど、CSEスコアって何?」という方もおられましょう。
CSE(Common Scale for English)というユニバーサルな英語のスコアがあります。今、英語力はこのCSEを基準としています。その尺度を英検で点数化することが行われ、英検を受験すると今は、その級の合否だけではなく、点数がでます。2級のテストを受けた場合、1980点以上をとれたら2級となります。
立教大学の総合型選抜は学部によって出願条件が違いますが、英語資格試験の級やスコアでの出願は全学部で認めています。
ある難関高校の自称「限界帰国子女」の女子は、「英語以外は全然駄目で、特に数学は赤点続きで、留年しそうになったぐらい」だったそうで、評定平均値は3.1。しかし、IELTSという英語資格試験で英検準1級相当以上のスコアをとり、それを武器に出願条件をクリアし、総合型選抜でMARCHに合格をしました。
また、そこまで英語が得意でなくても英語資格試験で高い級やスコアをとっていくと、有利になります。
志望理由書のクオリティも評定平均値のレベルも同じくらいの評価の受験生が2人いて、片方が英検2級で、もう片方が準2級なら確実に前者が有利になります。
英検1級までなくても、準1級があれば早慶上智ICUやMARCHでも有利になっていきますし、2級があれば日東駒専や大東亜帝国では強くなります。
総合型選抜や公募制は「評定平均値」「英語資格試験などの英語力」「志望理由書」の総合点で合否が決まります。ですから、英語力は高ければ高いほど有利になります。
そして、今後はこの英語資格試験重視の傾向は増していくと推測されます。 杉浦 由美子 プロフィール
受験ジャーナリスト ノンフィクションライター2005年に朝日新聞社でライター活動を始める。月刊誌や週刊誌で記事を書き、『女子校力』(PHP新書)のヒットをきっかけに教育関係を中心に取材と執筆をするようになる。現在は数多くのWEBニュースサイトで連載をし、週刊誌や月刊誌にも寄稿している。最新刊に『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)。



