中学生2人が自身のセクシュアリティに向き合いはじめる「クィア」の物語
さらに、本作で重要なのは「クィア」の物語であることです。クィアとはもともとは侮蔑的な言葉でしたが、当事者が用いてきたために今では肯定的な意味に変わっており、性的マイノリティー、さらに既存の性のカテゴリに当てはまらない人々の総称を指す言葉となっています。
そして、友梨と交流する中学生2人も、自身のセクシュアリティに向き合いはじめています。
LGBTQ+を描いた映画の中には、性的マイノリティーの苦悩や悲劇をセンセーショナルに描く、もしくは「消費」しているようにさえ思える作品があったのも事実です。それらが一概に悪いこととは言えませんが、『ナギダイアリー』はそれらとは対照的に「クィアでありつつも当たり前に日常を生きている」ことを描いています。 そうした作品はもっとあってほしいと心から願えましたし、『ナギダイアリー』では監督が誠実に物語に向き合い、俳優たちと製作チームがLGBTQ+の事前講習を受けていたからこその、クィアへの敬意や理解も作品から存分に感じられたのです。
エンドロールで流れる台湾語の歌を、最後まで聞いてほしい
深田晃司監督は、良い意味でお腹が痛くなってしまいそうな、人間の心の闇、もっと言えば地獄のような心理を描くことに長けた作家でした。その深田監督が今回は「地獄に入り込む寸前」を描いているからこそ、前述したようなスリリングさがありましたし、その地獄に行き着く前に踏みとどまる選択もまた尊いのだと示している、「とても優しい」映画という印象を受けました。
最後に聞こえる「言葉の響き」にも、身震いがするような感動があったのですから。本編中でも、石橋静河が歌う台湾語の歌が、本当にきれいに聞こえて印象に残る方も多いはずです。
本作を観た後は、きっとロケ地である奈義に「聖地巡礼」に行きたくなるでしょうし、特に「奈義町現代美術館(NagiMOCA)」のアートの数々を観たくなるはず。ぜひ、最後まで不穏な(でも後味はポジティブで感動的な)エンタメを楽しんでください。
この記事の執筆者:
ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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