(質問)
仕事中心の毎日、このままでいいのか不安になります。バリキャリとゆるキャリ、結局どっちが正解?
(回答)
キャリアには「バリキャリ」か「ゆるキャリ」かという二者択一の正解はありません。大切なのは、自身のライフステージや価値観の変化に応じて、アクセルとブレーキを踏み分けながら仕事のグラデーションを調整していくという視点です。自分なりの「譲れない軸」を持ちながらキャリアと向き合っていきましょう。
詳しくは以下で解説します。
「ゆるキャリ=楽な仕事」とは限らない
「バリキャリ=私生活を犠牲にして完璧に働く」「ゆるキャリ=楽だけど成長も収入もない」というステレオタイプのイメージに囚われてしまいがちですが、仕事への価値観は本来、そんなに白黒はっきりしたものではありません。
『女の転職type』の調査でも、働く女性が「お金を稼ぐこと」以外に見いだす仕事の価値として、「社会、人とのつながり(65.2%)」や「生きがい、人生の張り合い(48.2%)」が上位に挙がっています。
仕事は自己実現や社会貢献の場であり、プライベートは人生の豊かさを支える大切な土台です。どちらかを犠牲にするのではなく、どちらも大切にする道を探ってみてよいのではないでしょうか。
では、実際にどのような転職の形があるのか、実例を見ていきましょう。
実例①ゆるキャリを目指して転職したのに“こんなはずじゃなかった……”ケース
「少し仕事のペースを落としたい」と考えたとき、単に「残業がなく楽な仕事」をイメージしてしまうと、想定外のギャップに戸惑うこともあります。ゆるキャリを目指して転職をしたAさんの実例をご紹介します。
前職で営業職として採用部門の立ち上げにも関わり、管理職を期待されていたAさん。昇進の希望はなく、プライベートを充実させるために「仕事の比重を下げてゆるく働きたい」と、残業がほぼなくPCのシャットダウン時間が厳格に決められている企業へ転職しました。確かに残業はなくなりましたが、業務量が少ないわけではありませんでした。限られた時間内に業務を終わらせるため、職場では雑談することもなく、常に張り詰めた集中力が求められたのです。「これは求めていたゆるキャリではない……」と、Aさんは頭を抱える結果となってしまいました。
時間的な拘束が減ることと、精神的・肉体的な負担が軽くなることは、必ずしもイコールではないのです。
実例②働き方を見直して、理想を実現できたケース
雑貨販売の企業でエリアマネジャーを務めていた34歳・既婚女性のBさん。土日祝日を含むシフト勤務で、ゴールデンウイークや年末年始の長期休暇も出社が当たり前。残業も最低月50時間はあったそうです。これまではキャリアを優先してきましたが、「子どもも欲しいし、そろそろ本気で働き方を変えたい」と悩んでいました。
そこから彼女は、成長市場であるBPO業界の事務リーダー職へと転身。土日祝日休みと長期休暇、そして残業も平均25時間という環境を実現しました。前職でのピープルマネジメントやコストマネジメントの経験が生きるだけでなく、法人対応は初のチャレンジであり、今後求められるDX分野にも関わっていけるポジションです。これが「ゆるキャリ」と呼べるかは難しいところですが、ご自身の求めるバランスとキャリアアップを両立させた好例と言えます。
希望の働き方をかなえながら、市場価値を保つ方法って?
また、希望する働き方をかなえつつ市場価値も落とさないための近道の1つは、今の環境で「会社にとって重宝される人材になる」ことです。優秀な人材であれば、個別の希望は通りやすくなります。以下のような柔軟な働き方が認められるケースは少なくありません。
・子どもの保育園送迎のために8時出社を9時にずらす
・高齢の親の看護サポートのために地方からリモート勤務する
・個人向け営業で実績を上げてきた人が「法人向けにチャレンジしたい」と異動を希望する
「他社へ転職されてしまうくらいなら、環境を調整して自社で引き続き活躍してほしい」と会社側が動いてくれるケースは多々あるのです。もし調整が難しく転職を選択する場合でも、まったくの未経験職種へ移るのではなく、これまでの経験が生きる親和性のある領域で、新たなチャレンジ要素も含む企業を選ぶことが大切です。さらに、市場が拡大している業界を選ぶことで、市場価値を維持・向上させやすくなります。
「ブレーキ」と「停車」は違う——キャリアを手放さないために大切なこと
人生100年時代、私たちのキャリアは数十年続く長距離走です。常にアクセル全開で走り続ける必要はなく、子育てや介護、ご自身の健康のことなどでペースを落とす時期は誰にでも訪れます。
ここで気をつけたいのは、「ブレーキを踏んでペースを落とすこと」と「完全に停車して仕事を手放してしまうこと」は違うという点です。出産などを機に正社員のキャリアを手放して非正規雇用に移行すると、35歳以降に再び正規雇用へ復帰できる割合は5%以下という厳しい現実があります。正規と非正規の生涯賃金格差は1億円以上とも言われ、経済的自立を失うことは、将来パートナーの失業や病気、離婚などがあった際のリスクを大きく高めてしまいます。
だからこそ、どんなに仕事の濃淡を薄くしたとしても、「自分の名前で稼ぎ続ける力(=ポータブルスキル)」を磨くことだけは、やめないことが重要です。会社の看板やポジションに依存しない、どこに行っても通用するスキルこそが、いざという時に自分を守ってくれます。
アクセルを踏む勇気と、自分だけの「譲れない軸」
ライフステージが落ち着き、再び仕事に向き合えるタイミングが来たら、思い切って仕事の比重を高め、アクセルを踏み込んでみてください。新しいプロジェクトへの参加や、裁量の大きい仕事への異動など、これまでよりも1歩踏み出すチャンスが巡ってくることもあるでしょう。自信がなくても「完璧じゃなくてOK」の精神で、思い切って挑戦してみることをお勧めします。そうした経験を積み重ねることは、市場価値を高め、その先の人生の選択肢を増やすことにつながるはずです。
長い仕事人生の中では、大幅な転職や異動でなくとも、「今週はノー残業でいく」「来月有休を3日取るから今月は頑張る」といった、自分で小さな濃淡をつけていくことも大切です。
また、キャリアのグラデーションを迷わずに描き分けるコツは、「何があっても一生社会とつながり続ける」「○歳までにこれくらいの経済力を得る」といった、自分にとっての「譲れない軸」を決めておくこと。ブレない軸が1つあれば、濃淡をどのように変えようとも、自分の人生の「正解」を見失うことはありません。ご自身で小さな濃淡をつけながら、仕事とプライベートの両方を豊かにできることを願っています。



