一方で、上司の側には「そろそろ自分で動いてほしい」「何度も同じことを聞かないでほしい」といった焦りや、「期待していたほど成果が出ない」「この部下、使えない」といったネガティブな感情が生まれやすい時期でもあります。
今回お話を伺ったのは、心理カウンセラー・セミナー講師として15年間にわたり、延べ1万人以上の人生やキャリア相談に乗ってきた亀井弘喜さん。現在は自身が講師を務める経営塾でも、人材育成に関する相談を数多く受けています。
そんな亀井さんに、ご自身のマネジャー時代の体験をもとに、「使えない部下」と決めつける前に上司が持つべき視点について聞きました。
【質問】
「この部下、使えない」と感じたとき、上司はまず何を考えるべきなのでしょうか。【回答】
「この人はなぜできないのか」ではなく、「自分たちはこの人に何を伝えられていないのか」と問い直すことです。※本記事で紹介している商品の購入やサービスの利用により、売上の一部がオールアバウトに還元されることがあります。
「使える・使えない」で人を判断する現場への違和感
大学時代、大手ファストフード店でアルバイトをしていたとき、人材育成の原点となる出来事がありました。昼のピーク時は戦場のようで、「あいつは使える」「あいつは使えない」といった言葉が当たり前のように飛び交っていたのです。
私自身も新人の頃、十分に教わらないまま現場に立ち、もたもたしていると先輩から「お前、邪魔なんだよ!」と怒鳴られたことがあります。そのとき感じた「なぜ、教えてくれないのに、できないことを責められるのか」という悔しさが、その後の私の価値観に大きな影響を与えました。
人は、できない人を見たときに「能力や性格」の問題にしたがります。「覚えが悪い」「やる気がない」「向いていない」と判断した方が楽だからです。
しかし実際は、何を期待されているか分からない、失敗しても安心して聞ける関係性がない、というケースがほとんど。その状態で成果を求められても、人は本来の力を発揮できません。
「なぜできないのか」と問う前に、「できるようになるために、自分たちは何を渡せていないのか」を考える必要があるのです。
成果が出ない部下に必要な「小さな成功体験」
リーマンショック後の厳しい時代、私は営業グループのマネジャーとして、周囲から「使えない」と見なされていた若手社員を担当しました。彼は、同期が次々と初受注を上げる中、なかなか営業成果を出せませんでした。さらに、以前の上司から厳しい指導を受け続け、自信を失い、目はうつろで怯えているような状態でした。
こういうとき、上司はつい「営業に向いていない」と切り捨てたくなります。しかし私が考えたのは、「何を差し出せば、彼はもう一度前を向けるのか」ということでした。
人は、自信を失っているときに「もっと頑張れ」と言われても頑張れません。すでに頑張っているのに成果が出ず、さらに責められている状態では、心が縮こまってしまいます。
そんなときに必要なのは、大きな成果ではなく、100%自分でコントロールできる「小さな成功体験」です。
私は彼に、「絶対に自分次第で達成できる目標を、小さくクリアしていこう」と伝えました。
まず、彼はいつも始業ギリギリに出社していたため、私は「朝早く来ること」を提案しました。「みんなより早く出社して、余裕を持って仕事を始めた方が気持ちよくないかな? その代わり、夜は早く帰ろう」と。
売上は自分だけではコントロールできませんが、朝早く出社することは自分で決められます。これは彼を早く来させるためではなく、「自分で決めたことを守る」という積み重ねで、自分の足で立つ感覚を取り戻してもらうための提案でした。



