※本記事で紹介している商品の購入やサービスの利用により、売上の一部がオールアバウトに還元されることがあります。
部下が力を発揮するための3つの欲求
彼に必要だったのは、自信だけではありませんでした。人間には、「愛されたい」「認められたい」「役に立ちたい」という3つの根源的な欲求があります。仕事の場面でも、「自分はここにいていい」「自分のことを見てくれている人がいる」「自分は誰かの役に立てている」と感じられて初めて、人は安心して力を発揮できるようになります。
一方で、成果が出ない状態が続き、さらに叱責(しっせき)や否定が重なると、「自分は大切にされていない」「何をしても認められない」「チームの役に立っていない」と感じやすくなります。彼は、まさにその状態でした。
だから私はまず、彼のこの3つの欲求を満たすことを考えました。
「愛されたい」に対しては、安心してここにいていいと伝えること。「認められたい」に対しては、毎朝7時に来られたことを言葉にして認めること。「役に立ちたい」に対しては、売上以外でもチームに貢献できる行動を一緒に見つけることです。その1つの具体的な例が朝、チームメンバーの机を拭くという行動でした。
それから彼と私は、毎朝7時に出社して、机を拭くようになりました。
掃除は業者がやるものだと思われていた職場で、朝早くから黙々と机を拭く姿は、周囲の見る目を変えていきました。私は毎日のように声をかけ続けました。
「今日も7時に来られたね、すごいね」
「机がきれいになっているよ、ありがとう」
「俺たちは家族みたいなものだから、安心して働いて」
かつて厳しく責められ、人格まで否定されてきた彼にとって、「安心していい」「ここにいていい」と感じられることは、何よりも大きなエネルギーになったのだと思います。
「使えない」は、まだ「力を引き出されていない」だけ
その後、彼は異動先の事業部で、なんと社内MVPに選ばれるまで飛躍しました。もちろん、上司の関わり方で全ての部下が変わるわけではありません。しかし、「使えない」と決めつけるのと、「この人が力を発揮するために、何が足りていないのか」と考えるのとでは、マネジメントの質が根本から変わります。
伝え方を変える。期待していることを具体的に伝える。小さな成功体験を一緒に作る。安心して相談できる関係を作る。役に立っていると感じられる機会を作る。できていることを言葉にして認める。
そうした関わりの積み重ねによって、人は変わっていきます。「この部下、使えない」と思ったときこそ、上司自身も一度立ち止まる必要があります。
部下が変わらないとき、つい相手の問題だけにしたくなります。しかし、部下の姿は、上司や組織の関わり方を映す鏡でもあります。「使えない部下」は、もしかすると「まだ力を引き出されていない部下」なのかもしれません。
こういった部下が来たら、「なぜできないのか」ではなく、「この人に、自分は何を渡せていないのか」と考えながら共に成長する姿勢で関わることで、部下は少しずつ変わり始めるのではないでしょうか。 お話を聞いたのは:亀井弘喜さん
心理カウンセラー・セミナー講師。東北大学卒業後、外資系コンサルティング会社を経て人材業界に転身し、営業として高い成果を上げるとともに組織マネジメントにも従事。その後独立し、コーチングや心理学をベースに、キャリアや人間関係など人生全般の意思決定を支援するセミナー・講座を展開している。これまでの受講者は1500人以上、相談者は延べ1万人以上にのぼる。2025年には株式会社PERを設立し、外食事業にも参入。著書『最強の俯瞰思考』(KADOKAWA 2025年12月発売)
この記事の執筆者:
廣田 美絵子
大手化粧品会社で人事部にて採用・教育・広報を担当。その後教育系のベンチャー企業を経てフリーランスで取材・編集・執筆を行う。キャリアコンサルタントでもあり、人のキャリアや生き方にフォーカスした記事執筆を得意とする
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