著書『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』(飛鳥新書)で佐藤さんが説くのは、やることを増やすのではなく、自分にとって大切なことを見極め、人間関係や行動範囲をあえて「絞る」生き方。残された人生を後悔なく過ごし、人生の優先順位を正しく決めるための極意とは。
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定年後に最優先すべきことは何か
まず定年になったら、自分の「したいこと」「やるべきこと」をそれぞれ五つずつ、リストアップしてみる。そこで重複しているものが、いまのあなたにとって最も優先順位の高い項目だ。私の場合、「したいこと」の第一は神学論文を書くこと。それから、若い世代の教育に携わること。あとは買ったまま積んである軍用機などのプラモデルを数十個つくること。それから中学生のころ夢中になっていたアマチュア無線の免許を更新して、もう一度、やってみたい。さらに加えれば、もっと猫と遊ぶ、などなどである。
一方の「やるべきこと」……まず私は、抱えているいくつかの著作を完成させなければならない。それから大学や高校での教育活動。そして自分の健康管理。さらに、自分に何かあったときのために、家族の経済的な基盤を整えなければならない。
すると、「したいこと」「やるべきこと」の両方に共通するものとして「教育」というキーワードが浮かび上がる。私が優先順位の一位として取り組むべきは、若い人の教育ということになる。
定年後の人たちも、残りの人生で何にどのくらいの時間をかけるのか、じっくり考えるべきだ。それによって、一人一人の人生の価値が決まると言っても過言ではない。
自分の行動範囲や人間関係を限定する
本書を執筆している2025年前後に定年後の人生をスタートさせた人たちは、バブル時代を経験している。日本社会がエネルギーに満ちあふれていた時代を知っている。その時代だからこそ得られた豊富な体験や知識があるのだ。ともすると、最近の若い人たちは内向きで活力がないなどと言われるのに対し、遊びも含めて、外へ外へと飛び出していった人が多い。
旅行でもグルメでも、この贅沢(ぜいたく)な体験が、現在の社会における衣食住のレベルを底上げしていると思う。たとえば、格安で知られるサイゼリヤのメニューがあれほど種類豊富で美味であるのは、バブル時代にグルメ志向を体験した人たちが、サービスを供給する側にも消費者側にもいるからだと、私は考えている。
目利(めき)きをする力や文化力があり、様々な物事の経験値が高いのが、現在、定年を迎えた人たち。その潜在能力を発揮すれば、やっとデフレから抜け出して賃金が上がりつつある日本社会を救うことができるはずだ。
そんな定年後の再スタートは、遠洋航海から港に帰ってきたときと同じである。そこで錨(いかり)を下ろしたら、自分が培ってきた経験値や人生観で、己を固定するのだ。
そうして、自分の行動範囲や人間関係を限定したうえで、残りの人生を有意義なものに変えていく。なんと素晴らしい時間だろう——。



