「物価が上がったらどうしよう」「急激なインフレで生活が成り立たなくなるのでは?」——ニュースを見れば値上げの話題ばかり。人生の残り時間が長い50代だからこそ、こうした経済的な懸念を抱く人は少なくないでしょう。
しかし、老年精神医学の専門家である和田秀樹氏は、「その不安は過度なものかもしれない」と指摘します。
本記事では、和田秀樹さんの著書『50歳からのチャンスを広げる 「自分軸」』(日東書院本社)から一部抜粋し、なぜ「インフレを心配しすぎなくていいのか」を解説します。
「物価高で破産」はまず起きない
お金の心配はないと言われても不安になるのが人間です。「物価が上がるのでは」「急激に円安が進んで輸入品がとんでもなく高くなったら生きていけない」。残された人生が長いからこそ、50代のみなさんの中にはそうした心配を抱く人が少なくないかもしれません。
日本は円安が進んで、食品の材料や食料品などの輸入品は値上がりするかもしれませんが、トータルで見れば物価は上がらないのではと私は考えています。
日本は給料が極端には上がらない国ですので、材料費が値上がりしても、企業やお店が上昇分をそのまま価格転嫁するのが難しいからです。給料は増えていないのに、商品を値上げしても売れません。こうしたデフレの経済構造はそう簡単には変わりません。
もちろん、こうした経済要因は分からないことが多いので断定はできません。給与水準が上がれば物価高はおきます。ただ、日本の経営者はケチばかりですし、労働組合がまともに機能せずにストもせずに政権にすりよっているのですから、給与水準が上がることもまずないでしょう。
奇跡的に物価高が起こっても、物価高をもたらす多くの問題はテクノロジーが解決するでしょう。
たとえば、今は3Dプリンターを使えば住宅ですら作れる時代になりました。近い将来に、つくろうと思えばほとんどのものがつくれるようになるでしょう。当然、百均で売っているような商品は今よりも安くなるはずです。
飲食店や物流業の人手不足もロボットや自動運転車が解消するはずです。こうした業態では人件費が最終的なサービスの価格に大きく影響します。すでにファミレスでは配膳ロボットが導入されているのはみなさんもご存じのはずです。
これは居酒屋など多くの飲食店に広まるでしょう。居酒屋で注文したくて呼んでも誰も来ないなんて事態はなくなり、人の代わりにロボットが対応することで、従来と値段は変わらない未来が訪れる可能性が高いでしょう。
タクシーも人手不足で利用したくても利用できなくなるのではとの指摘がありますが、Uberのようなライドシェアがどんどん解禁され、おまけに無人運転になれば、そこらへんにタクシーがあふれ、移動にもそんなにお金はかからないはずです。
加齢による「少食」が家計の防波堤になる
食品も値上がりする要素はありますが、みなさんが支払う額は大きく変わらないかもしれません。50代の方はまだ実感がないかもしれませんが、60代になると、そして高齢になればなるほど食べる量は減る傾向にあります。買い物では小ロットを求めがちになります。
最近は若い人でも単身世帯が増えているのでスーパーでも一人用の鍋の具材セットなどが売られていますが、あのような小分けの商品が増えるでしょう。
たとえば、これまで100グラム単位で売っていたものを80グラム単位でパッケージして従来と同じ値段で売るような形です。実質、25%の値上がりになりますが、表向きの値段は変わりません。
企業やお店はそうした実質的な値上げに気が付かないように少しずつ値上げを進めるでしょうが、払う側にすれば使う金はそう増えません。
損したような気分になるかもしれませんが高齢になれば大ロットで買ったところでムダになるだけです。使わないで捨てれば環境にも悪いでしょう。大ロットで少し値引きされるよりは、同じ値段で必要な量を変えるほうがお得感は増します。
ですから、テクノロジーの進化と人口構成の変化に伴ってのビジネスモデルの転換で、物価が今の2倍、3倍に上がることはないというのが私の見解です。結果的に、物価高で貯金がパーになるシナリオは考えなくてよいです。
何歳まで働くかという問題はありますが、健康で少しでも働いているようでしたら、年金もありますし、貯金しなきゃと不安に駆られる必要はありません。お金はなくても生きていける時代が訪れつつあるのです。
10年後、20年後の世界は少子高齢化とテクノロジーの発達によって、シニア世代の生活はむしろ豊かになっていくかもしれません。



