「高い=美味い」の常識はもう古い
確かに、衣食住を満たし、安心して暮らすためには一定の収入は必要です。しかし、みなさんがこれから生きる時代は贅沢しなければ豊かに暮らすことは十分可能です。しかも、健康であれば70歳以降も働くことができる時代になっています。
また、世の中が進歩すれば、お金をかけずに衣食住を楽しめるようになります。
たとえば、私が小さいころ、牛肉は非常に高価な食べ物でした。1991年に貿易が自由化されるまで牛肉は輸入が制限されていたからです。
量が少ないだけでなく、私が小さいころは為替が1ドル360円でしたし、1985年のプラザ合意までは1ドルが二百数十円の世界でした。輸入するとなればそれなりの額を支払わないと手に入りません。今のような安い輸入肉はありませんでした。
当時は焼肉に連れて行ってもらうのが楽しみでした。実際、非常に高価でしたが、おそらくその当時に食べた1万円くらいの焼肉と同じレベルのものが今では2000円の食べ放題で食べられます。
これは貿易の自由化で競争が生まれて、よいものが安く手に入るようになった上、焼肉屋さんの仕込みなどの技術も時代を重ねることで飛躍的に向上しているからです。
同じように私の幼少期は寿司もそれなりのお金を出さないと食べられないご馳走でしたが、今では回転ずしに行けば2000円もあればおなかいっぱいに食べられます。これも技術の進歩が大きく関係しています。
かつては職人がひとつひとつ握っていましたが、今では機械で寿司を作れるようになりました。大量仕入れでよいネタを安く買うビジネスモデルが広がりました。味のほうもこだわりがなければ十分に楽しめる水準まで高まっており、今後ますますそのレベルは上がるはずです。
もっと複雑な料理もロボットがこなせるようになっています。切ったり、ゆでたり、いためたりすべてロボットで完結します。ファミレスの料理は今よりも安く美味しくなる可能性もあります。
服もファストファッションで多くの人は困らないはずです。有名ブランドの服に比べて、ユニクロの服の機能性が悪いという声は聞きません。デザインも著しく変なものは少ないですし、シンプルでいいという声すら最近はあります。
自動車も同じで、ラグジュアリーな内装やハンドメイドかどうかなどにこだわらなければ外車ではなく国産のセダンで十分ですし、近場の移動用と割り切れば軽自動車でも性能面では不自由しないはずです。
「貧富の差」はAIが消滅させる
最近は貧富の格差が日本でも話題になっています。確かに低所得者と高所得者の収入の差は開いているかもしれません。ただし、収入が低かったり、金融資産を持っていなかったりしても、それなりのものを食べられる時代でもあります。
世の中が豊かになって、テクノロジーが進化すればするほどお金持ちの人とそうでない人が味わう食べ物や着る服などの差は小さくなっていくでしょう。
そう考えるとお金に依存する必要はますますなくなっていきます。AI が進歩すると一流のレストランの味とまったく変わらないくらいの食事が家で作れる可能性も十分あります。
もちろん、一流のフレンチ料理が食べたい、料亭で懐石料理を食べたいと考える人もいるはずです。スマートフォンも常に最新の機種を欲しい人もいるはずです。
そうした人はお金を出せばいいのです。一流のレストランや料亭で食べればファミレスで食べるよりも気分は高揚するはずです。ただ、値段の差ほど味に違いを感じない人も多いはずです。
これもテクノロジーの進歩で高級なものとそっくりな味のものが作られつつあります。そしてその差は今後縮まっていくでしょう。気分や満足にお金を払う時代になるはずです。
同じように家電やスマートフォンなども最新の機種を欲しい人はお金を払えばいいのです。最新でなくてもインターネットを見たり、SNS を発信したりするのにはまったく問題ありません。
これからお金がなくても楽しい日々を送れるインフラがますます整うと考えれば、お金に対する不安も和らぐはずです。 この書籍の執筆者:和田秀樹 プロフィール
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ、カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、現在、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長、 立命館大学生命科学部特任教授 。



