まるで指定校推薦……東京科学大学「女子枠」の不公平感をデータで検証【女子間の格差も】

なぜ東京科学大学(旧東工大)の「女子枠」は反発されるのか? 一般選抜女子のジレンマや、導入後に激変した女子校の合格者ランキングなど、最新データからキャンパス内に広がる格差と「指定校推薦的な要素」の違和感を検証します。(画像出典:PIXTA)

「公立出身の一般選抜」vs「私立中高一貫出身の女子枠」

同記事の中でヤスダさんはさらに、「男子は公立出身者が多い。自分も公立出身だ。一般選抜入学者は公立出身が多い。一方で女子枠の学生は私立中高一貫校出身者が多く、そこには経済的な格差がある」という趣旨の証言をしています。

こちらも実際の合格者データから検証してみます。

教育情報サイト「インターエデュ」が公開している2026年度の高校別合格者ランキングを参考にしてみましょう。

東京科学大学には医療系(旧・東京医科歯科大学)と理工系(旧・東工大)があり、サイト上の速報値では両方の数字が合算されています。そのため、一見すると1位は開成高校ですが、これには医学部医学科の合格者が多く含まれています。

そこで、入試情報に定評のある「大学通信」が2026年4月15日にX(旧Twitter)で投稿した、医学部医学科の高校別ランキングおよび合格者数のデータを加味し、理工系のみのランキングを逆算・抽出しました。

その結果、2026年の理工系の合格者ランキングの実質1位は神奈川県立翠嵐高校となり、上位26校のうち14校を公立高校が占めることが分かりました。大学の関係者や学生から「うちは公立出身者が多い」という声がよく聞かれるのは、データ的にも裏付けられているのです。

一方で、同大の医学部医学科(旧東京医科歯科大学)におけるランキング上位10校は残酷なことに全て私立中高一貫校と国立大学附属校が占めています。

1位は開成高校、2位は桜蔭高校、3位渋谷学園渋谷と私立の最難関校が占め、公立校は都立日比谷高校や県立翠嵐高校といった最難関校ですら上位10位に名前がありません。

こうした状況から、国公立医学部には届かないものも公立校のトップ層が、理工系の最難関として同大の理工系を選択している構図が見えてきます。

女子枠導入で激変した高校別の合格者ランキング

この合格者ランキングで特筆すべきもう1つの変化は、女子枠入試が本格化した結果、ランキング上位に有力な女子校が急浮上してきた点です。

女子枠がスタートする前の東京工業大学時代、2023年の合格者ランキングに名を連ねる女子校は、9位の豊島岡女子学園(11名)や、23位の鴎友学園女子(8名)など極めて限定的でした。

ところが、2026年度のランキング(速報ベース)では、23位に吉祥女子高校(12人)、29位に洗足学園高校(11人)がランクインしています。

洗足学園の2026年の合格実績を詳しく見ると、同大への進学者11人のうち10人が理工系に進学ています。女子枠が始まる前の2023年度における洗足学園からの東工大合格者数は2名だったため、わずか数年で5倍の合格者を出している計算です。

吉祥女子高校も、2023年度の2名から、女子枠の始まった2024年度には8名へと急増しています。

こういった私立難関中高一貫の卒業生たちからは「高校側から大学の女子枠を受験するよう具体的な働きかけがあった」「大学の担当者が高校にやってきて説明会を開いた」という証言が複数確認されています。

もちろん、こういった大学や高校からの働きかけを受けた女子枠合格者は一部だと推測できますが、それでもその外にいた女子から見ると「なぜ一部の高校の生徒が情報を持っているのか」「まるで指定校推薦」と反発が起きるのは不思議ではありません。

新しい入試方式が導入され、そのアプローチや情報が特定の高校に手厚く提供されている現状に対して、「これでは実質的に一部の選ばれし高校に向けた指定校推薦のようなものではないか」という違和感を抱く人が出てくるのは想像できるのではないでしょうか。

求められる今後の議論

受験生の間で不公平感や疑問の声が渦巻く、東京科学大学・理工系の「女子枠」問題。共学なのに男子が出願できない入試はどうなのか、男子への差別ではという疑問が生じています。また、「女子枠」入試実施で「合格の可能性が高まる女子学生」と、そうではない女子学生の格差が生じているようにも見えます。

入試方法の多様性と公平な競争環境の維持という課題をどのように両立させていくのか、今後の展開を引き続き注視していく必要があります。
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佐藤 れん
この記事の執筆者: 佐藤 れん
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