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なぜ「高校の成績オールA」でも授業についていけないのか?
この報道を見て、こう感じた方々もいたのではないでしょうか。「カリフォルニア大学に入学する学生は、高校の成績がすこぶるいいはず。なぜその彼らが大学入学後、学力面で苦戦するのだろうか?」
アメリカの難関大学の入試では、高校の成績はとても大事な材料です。高校の成績を見て学力を推測し、合否を決めていきます。
もちろん大学側も、高校のレベルを一律には扱っていません。日本の大学入試でも「偏差値50の高校の評定4.0」と「偏差値60の高校の評定4.0」を同じに扱わないように、カルフォルニア大学側は各高校のレベルや過去の実績を考慮した上で、成績を補正して評価しています。
それにもかかわらず学力低下が起きた原因は、高校の成績の付け方が、必ずしも「本当の学力」を反映していない可能性があるからです。
実際の高校現場では、成績の評価基準が「真面目にやっていれば最高評定(4.0)がとれる」ようなケースが指摘されています。つまり、通知表の成績が実質的に”インフレ”してしまっているのです。
客観的な学力テスト(SATやACT)が使えず、高校の成績も信用できないとなれば、大学側は受験生の実力を見極める手段を完全に失ってしまいます。これこそが、名門大に「中学数学から教え直さなければならない学生」が紛れ込んでしまったカラクリです。
「格差是正」と「学力担保」のジレンマ
この問題に直面しているのは、カリフォルニア大学だけではありません。すでにアメリカの名門大の間では、揺り戻しが起きています。マサチューセッツ工科大学(MIT)が2023年に入学者選考でのSATやACTの提出を再び必須化したのを皮切りに、イェール大学やブラウン大学といった最難関校も、相次いで必須に戻す方針を発表しています。
「学力テストは富裕層に有利で不公平だ」とSATやACTを排除した結果、皮肉にも「大学教育が成立しない」という現実に直面することになりました。
それにしても、世界に名だたる名門公立大学で大学教員が「中学数学から教え直さなければならない」と嘆くのはにわかに信じられない話です。
これは単に入試制度だけの問題ではなく、経済的に恵まれない家庭の子どもたちが、地域の公立学校でどれだけ頑張って勉強しても、大学で通用するレベルの学力が身につかないという、アメリカの教育全体が抱える根深い問題を浮きぼりにしています。
格差をなくすためによかれと思った動きが、結果として学力不足という別の深刻な問題を生み出してしまった今回の件は、アメリカの教育界に大きな課題を投げ掛けるものとなりました。
この記事の執筆者:
杉浦 由美子
ノンフィクションライター
キャリア20年の記者。『女子校力』(PHP新書)、『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)など単著は14冊。『ダイヤモンド教育ラボ』、『ハナソネ』(毎日新聞社)『マネーポストWEB』(小学館)などで取材記事を寄稿している。趣味は取材。
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