SATやACTというのはアメリカの大学受験で利用できる共通学力テストです。日本でいう共通テストと似た存在です。
日本の受験生は共通テストの得点を出願の際に提出しますが、同じようにアメリカの高校生も共通学力テストのSATやACTの得点を提出します。
現在、同校の入試では共通学力テストのSATやACTが合否判定に利用されていません。
その結果、「学生の学力が下がり、大学レベルの授業を始める前に中学・高校レベルの数学を教え直さなければならない」「留年や単位を落とす学生が続出している」「このままでは、学生へのフォローに割く人手や時間が足りない」と、教員たちは強い危機感を示しています。
なぜ、世界でもトップレベルの公立大学でこのような事態が起きているのでしょうか。今回は、この問題について考えていきます。
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アメリカ入試の本質は「高校の成績」と「共通学力テスト」
こうしたニュースが出ると、日本のSNSでは次のような声がよく挙がります。「アメリカの入試はボランティアや留学など“経験が全て”だから、学力が下がったのだ」
「お金持ちの子どもはいろいろな経験を積みやすい。そういう経験を評価した結果、学力が担保できなくなった」
このような声が挙がる理由は、ボランティアや留学のプログラムなどの“経験”を販売する業者が、インフルエンサーに費用を払って、この「アメリカの入試は経験が全て」というイメージを拡散してきたからです。
しかし、実際には、アメリカの大学で重視されるのは「高校の成績」です。アメリカの名門高校に通っている生徒たちは、高校の段階で「どの大学に進学できるか」がだいたい分かります。なぜなら、高校の成績を見ればどのあたりに受かるか判断できるからです。
日本の場合、大学受験の指導は模試の偏差値を見て、「このあたりなら受かる」と受験プランを決めていきますが、アメリカの場合、高校の成績を見てどこを受験するか考えます。
高校の通知表の成績だけではなく、どのレベルの授業を、どれくらい取っているかも入試では評価されます。より難しいコースを履修していると評価が高まります。
最難関大学になると、「ほとんどオールA」の生徒が世界中からたくさん出願してきます。
そんな「高校の成績がトップクラスの層」が受験してくるため、高校の成績だけだと差がつきません。
そこで、共通学力テストのSATやACTの点数を使って、学力の差をより細かく見ていきます。日本の推薦入試でも高校の評定平均値と共通テストの得点を見て合否を決めるものがありますが、それに近い形になります。
つまり、最難関大学では高校の成績とSATやACTといった学力テストのスコアの「2つのポイント」を重視し、合否の判定をしてきました。
「活動実績」はあくまでオプションに過ぎない
一方で、研究活動やコンテスト、ボランティアなどの活動実績は、あくまでもオプションです。世界中から「オールA」の高校生が出願してきて、みなSATやACTの得点も高い。合否のラインに複数の受験生が並びます。そうなると活動実績で差がついていきます。
ある受験生は高校の成績はよかったものの、英語が母国語ではないのでSATのスコアが高くとれませんでした。
しかしこの受験生は、地元で1人で始めたボランティア活動に地域の高校生を巻き込み、規模を大きくしていきました。地道な活動が評価され、アメリカの最難関大学に合格しました。このような例はあくまでも例外です。
ほとんどの高校生はそうそう特別な活動実績は作れないので、高校の成績と共通学力テストのSATやACTのスコアで合否は決まります。
ですから、難関高校で「オールA」であり、SATやACTの得点が極めて高いような場合、活動実績が優れていなくても合格します。
ちなみに、どんなにめざましい実績があっても高校の成績がよくないと合格はできません。
実際、ある高校生は世界レベルの論文を書き上げて、世界中から「これはすごい」と評価されましたが、高校の成績がよくないのでアメリカの最難関大学へ出願すらできませんでした。
なぜ名門大は「学力テスト」を手放してしまったのか?
今回は、カリフォルニア大学で、数学や理系の教員たちが大学側に「入試でSATやACTなどの学力テストを復活させてほしい」と強く訴えている問題について考えてきました。では、なぜ入試の選抜基準から学力テストが外されたのでしょうか。後編では、その原因と背景について解説します。
この記事の執筆者:
杉浦 由美子
ノンフィクションライター
キャリア20年の記者。『女子校力』(PHP新書)、『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)など単著は14冊。『ダイヤモンド教育ラボ』、『ハナソネ』(毎日新聞社)『マネーポストWEB』(小学館)などで取材記事を寄稿している。趣味は取材。
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