皇族の数が減少するなかで、対策としてたびたび議論されてきたのが「女性宮家」の創設です。女性皇族が結婚後も皇室に残り、新たな宮家を構成できるようにする制度案です。
一見すると現実的な解決策のようにも思えますが、制度面ではさまざまな課題が指摘されています。結婚相手の扱いや皇位継承との関係など、検討すべき論点は少なくありません。
本記事では『竹田恒泰の特別講義 天皇と皇族』(竹田恒泰・著/Gakken)より一部を抜粋・編集し、女性宮家構想の制度上の論点を整理しながら、竹田氏が提唱する解決策について紹介します。
女性宮家が生む「民間人皇族」という問題
そもそも、女性宮家を創設すれば、多くの混乱を引き起こす火種になりかねません。
仮に内親王がご結婚後も皇室にとどまり、女性宮家を構成することになった場合、その配偶者、すなわち結婚相手をどう位置づけるのかという問題が生じます。
もし相手が民間人であれば、二千年以上の皇室の歴史のなかで前例のない「民間男子の皇族化」という事態が出来(しゅったい)します。むろん、過去にそのような例は一度もありません。
さらにいえば、現実的な問題も次々に発生します。
たとえば、結婚相手である民間人の男性が宮邸に住むとなると、それは「公的な施設に民間人が居住する」ことになり、不当利得の問題が発生します。
家賃はどうするのか。光熱費は誰が負担するのか。妻である皇族の分は税金で賄われるとしても、夫である民間人の分は私費で負担してもらう必要があります。
このように、同じ屋根の下で暮らすにしても、公私の区分が複雑にからみ合い、費用分担一つとっても合理的な説明が困難になるのです。
そして、子どもが生まれた場合、その子は男系ではないので民間人となります。民間人でありながら、皇族と同居し、すべての生活費が税金から支出されることは説明が困難です。逆に、「それほど皇族に近いならば、皇位継承権を認めるべきではないか」という議論も必ずや生じてきます。
将来的には、皇室に「皇位継承権を持つ男子」と「継承権を持たない男子」が混在する不安定な状況が生まれます。かたや父親が皇族であるために継承権を持ち、かたや母親が皇族であるのに継承権を持たない——こうした違いに対し、「不平等だ」「差別ではないか」という声が国民から上がるのは必至です。
女性皇族のご結婚に新たな負担も
また、「皇室に残るかどうかをご本人が選べるようにするべきだ」という意見もありますが、これは逆に女性皇族を苦しめる制度になるでしょう。
たとえば、女性皇族がご結婚にあたって「皇室を離れたい」とご希望になったとしても、世論が「残るべきだ」と圧力をかける可能性があります。
逆に「出ていけ」という批判が集中することもあるかもしれません。SNSやネットメディアが発信力を持つ現代において、そうした心ない意見が瞬時に拡散され、ご本人の意思が尊重されない状況が生まれかねないのです。
現在でも、女性皇族のご結婚には高いハードルがあります。それが「結婚しても皇室に残る」という前提が加われば、さらにハードルは高くなります。もし妻は皇族のままということであれば、普通の感覚の男性なら結婚を躊躇するのは当然です。
仮にご本人が「民間人として生きたい」とお望みになっても、世論がそれを許さず、恋愛や結婚の自由すら阻まれるようであれば、それは「女性皇族の人権を守る」どころか、かえって踏みにじる結果になります。
このように、女性皇族が結婚後も皇室に残る制度には、何ひとつとして現実的な利点がありません。
にもかかわらず、保守を名乗る政治家の多く——特に日本会議の影響を受ける自民党の一部が、驚くべきことにこの制度に賛成しているのです。私はこの動きに、強い危機感を抱いています。



