ヒナタカの雑食系映画論 第217回

『パリに咲くエトワール』なぜ殺陣作画監督とメカデザイン? 見る前に知ってほしい8つのこと

劇場アニメ『パリに咲くエトワール』における「バレエ作画監督と振付師」「殺陣(たて)作画監督」「メカデザインとメカ作画監督」のスタッフが具体的に手掛けていたことなど、見る前に知ってほしい要素を解説しましょう。(画像出典:(C)「パリに咲くエトワール」製作委員会)

3:現実のバレエを雄弁に語る作画のこだわり

本作はファンタジー色のない日常を描く内容のため、ともすると地味な印象を持たれるかもしれませんが、実は人間の細かい動きがこだわり尽くされている、「作画がものすごい」作品であることを特筆するべきでしょう。

特にバレエシーンでの動きは圧巻です。それもそのはず、バレエの作画監督を務めたやぐちひろこによると、「実際の専門家の動きをモーションキャプチャで3DCGに反映した映像を原画のスタッフに見てもらい、大まかなラフのプランを描いてもらって、そこで押さえておきたいポイントをチェックして、その上でレイアウトとラフ原画に入ってもらう」という工程を踏んでいたのだとか。
パリエト
(C)「パリに咲くエトワール」製作委員会
そのほかにも、「バレエは先端がきれいなことが大事なので、つま先の伸ばし方や手の使い方などについての注意事項をまとめて共有していた」「ポジション、姿勢、目線といったものも実際に忠実に描くことで、バレエの持つ余韻も含めて伝えられたら」と、やぐちひろこは語っています。

さらに、「千鶴はあの年齢からバレエを始めてプロに追いつけるほどの天才なので、基本の動きも含めて最初から上手く描いていますが、谷口監督と話し合った上で『武道をやっていたから関節が開かない、股関節がかたい』という設定を踊りに反映しています」と、「キャラクターの元々の動きの特徴」までも取り入れていたそうです。
振付師である田北志のぶは、パリ在住の元バレエダンサーのウィルフリード・ロモリの元を訪ねて指導を受けています。その田北のほか、MYKYTA SUKHORUKOV、根岸祐衣、大城美汐の4人のバレエダンサーの踊りをモーションキャプチャーで映像に取り込み、さらにロモリは本編ではクライマックスの「ジゼル」の振付も担当しています。

バレエのプロと作画スタッフの連携によって生み出されたその動きは、アニメという表現だからこそ、現実のバレエの美しさや表現の豊かさを雄弁に語っているのです。その1つ1つの動きを、ぜひ見逃さないでほしいです。

4:薙刀のアクションはバレエの影響も受けていた

薙刀で戦うアクションシーンもふんだんにあることも大きな見どころ。「殺陣作画監督」を務めたのは、『アイの歌声を聴かせて』のクライマックスで階段を上っていくシーンも手がけていた中田栄治。本作の作画のために谷口監督などスタッフと一緒に「北辰一刀流玄武館」に取材に行き、数日間指導を受けていたそうです。

中田栄治は実際に薙刀を手にして動きの難しさがわかったため、道場の先生の動画も参考にして、詳細にアクションを組み立てたコンテも作ったものの、谷口監督にチェックしてもらった時に、「ここに回し蹴りを入れてもらえますか」といったプラスアルファが必ずあって、より大変な内容になっていたのだとか。
そのほか、「フジコと再会するシーンでは武術家らしいムダのない動きを意識していますが、映画後半になるとバレエの影響を受けてだんだん自由な感じの動きになっていく」というこだわりや、「実際には危険なのでやらない、足を高くあげるバレエ的な動きもエンタメ性を意識して取り入れていて、そこにはバレエ作画監督のやぐちさんにも確認してもらいました」という大胆な試みもされているのです。

シンプルに女の子が流麗な動きで戦う様そのものがカッコいいですし、フランスの棒術である「ラ・キャン」の使い手であるチンピラとの戦いは手に汗握るスリリングさもあります。バレエの動きはもちろん、薙刀の動きもまたキャラクターの成長とリンクしていることに着目するといいでしょう。
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『スチームボーイ』のような「煙の芝居」も楽しめる
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