ヒナタカの雑食系映画論 第217回

『パリに咲くエトワール』なぜ殺陣作画監督とメカデザイン? 見る前に知ってほしい8つのこと

劇場アニメ『パリに咲くエトワール』における「バレエ作画監督と振付師」「殺陣(たて)作画監督」「メカデザインとメカ作画監督」のスタッフが具体的に手掛けていたことなど、見る前に知ってほしい要素を解説しましょう。(画像出典:(C)「パリに咲くエトワール」製作委員会)

7:ボイスキャストの好演と「文芸的」な2つの要素

本作のボイスキャストは、フジコ役に當真あみ、千鶴役で嵐莉菜という、本業が声優ではないキャスティングがされていますが、それぞれが「応援する立場」「戸惑いつつも頑張る」役柄にとてもマッチしていました。
青年ルスラン役の早乙女太一や、バレエを教えるオルガ役の門脇麦の声には、「悩みを持ちながらも導く役」としての大きな説得力がありました。
パリエト
(C)「パリに咲くエトワール」製作委員会
それらのボイスキャストの「生っぽい」演技に絡んでいるのは、谷口監督の「バレエや絵や薙刀という視覚的なエンタメ以外のところは、『文芸的』になってもいい」という挑戦です。

その文芸的とは、「善人や悪人がいるのではなく、ひとりの個人としてそこに存在しているということをちゃんと表現すること」と、「なにもかもを台詞で説明するのではなく、観客がキャラクターたちの心情を想像する余地のある演出をすること」だったとか。
パリエト
(C)「パリに咲くエトワール」製作委員会
さらに、「意図的に余白を残す」スタイルは、谷口監督自身の目標でもある高畑勲監督が『母をたずねて三千里』などでやってきたことだったのだとか。その通りで、本作はほんの少しの台詞や表情、さらには余白から「この人はきっとこうなのだろう」と想像できることにも、面白さがあるのです。

8:幸せな気分で映画館を後にできる作品に

谷口監督は「幸せな気分で映画館を後にしてほしい」とも願っています。
パリエト
(C)「パリに咲くエトワール」製作委員会
その幸せというのは、「ふたりの頑張る姿をみて励まされた」でも、「応援していたキャラクターたちの輝く瞬間を見て、よかったね」でも、「アニメでバレエや薙刀を見られておもしろかった」でもいいとのこと。

その上で、「映画館でしか体験出来ない映像と音楽を意識しているところでもあるので、フジコや千鶴といっしょに100年前のパリを共有し、ともに時間を過ごしたことを楽しんでもらえればうれしい」とも、谷口監督は願っているのです。
まさにその言葉通りであるので、細かいアニメの演出はもとより、エンタメとして楽しむというのが本作の本懐でしょう。この春は話題作が目白押しですが、その中でも万人向けの作品として、ぜひ候補に入れてみてほしいです。
ヒナタカ
この記事の執筆者: ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。 ...続きを読む
>プロフィール詳細
最初から読む
 
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • どうする学校?どうなの保護者?

    「まだ体育館で軟禁されてるの?」役員決めを廃止したPTA、保護者と先生が手にした“穏やかな春”

  • ヒナタカの雑食系映画論

    映画『鬼の花嫁』で永瀬廉が体現する「俺様ではない魅力」とは。『シンデレラ』的物語へのアンチテーゼも

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    江ノ電20年ぶり新車、謎の「1人掛け席」の正体は? 観光サービスではなく「混雑地獄」に挑む苦肉の策

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    「移民」に冷たいのはどっちなのか? スイスの厳格過ぎる学歴選別と、日本の曖昧過ぎる外国人政策