ヒナタカの雑食系映画論 第217回

『パリに咲くエトワール』なぜ殺陣作画監督とメカデザイン? 見る前に知ってほしい8つのこと

劇場アニメ『パリに咲くエトワール』における「バレエ作画監督と振付師」「殺陣(たて)作画監督」「メカデザインとメカ作画監督」のスタッフが具体的に手掛けていたことなど、見る前に知ってほしい要素を解説しましょう。(画像出典:(C)「パリに咲くエトワール」製作委員会)

5:『スチームボーイ』のような「煙の芝居」も楽しめる

本作は殺陣作画監督のほかにも「メカデザイン」「メカ作画監督」がクレジットされているため、「もしかして巨大ロボットが出てくるの?」などと話題になっていましたが、もちろんそんなことはないのでご安心(?)を。

実際にメカデザインの片貝文洋が手掛けたのは、列車や自転車。設定考証の白土晴一と協力して実在する乗り物のデザインにこだわっていたのです。
ラジオ番組「アフター6ジャンクション2」に出演した谷口監督によると、「キャラクターや世界観に合ったメカの描き方があり、シャープなエッジの効いた画にするとメカが浮いてしまうため、どこか丸みを残すようにしている」という調整があり、メカ作画監督の橋本敬史は「メカから出る煙を写実的にしながらも、写実的にしすぎることなく煙の『芝居』ができるようにする」取り組みをしていたのだとか。
橋本敬史は、タイトル通りに煙の描写が印象的な『スチームボーイ』でもメカエフェクト作画監督と原画を担当していました。今回は後述するネタバレ厳禁の場面で特に「煙の芝居」がとても面白いことになっていたので、ぜひそちらにも注目してほしいです。

6:終盤の突飛な展開は賛否両論?でも想像できることに面白さもある

前述した「1人だけ夢へ進めなくなってしまう」こと以上に、本作で賛否両論が分かれるであろうことは、終盤にとある「これまでの流れからすればやや突飛な展開」が、しかも「二段構え」で待ち受けていることでしょう。

その二段構えのどちらもが「いくらなんでもこんなことはしないだろう」と思ってしまう、現実離れしたものであるので、これまでのリアルな物語に惹かれていた人は、「冷めて」しまう原因になるかもしれません。

しかし、筆者個人としては、それらは予定調和にならないサプライズとしても、ちょっと笑いつつも楽しめました。「あの人の行動はあまりに不自然なので、もしかすると言っていることとは違う意図があったのでは?」「その後のあの人のとんでもない行動も、これまでのキャラクターの描写からすれば納得できるのでは?」などと想像できたのです。

これらのシーンでは、前述してきた「アクション」「メカ」の作画のすごさが大盤振る舞いの、単純なサプライズにとどまらないアニメとしての豊かさがたっぷりであることにもぜひ注目してほしいのです。少なくとも、「えっ!?なんだその展開!」と戸惑うだけではもったいないですよ。
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ボイスキャストの好演と「文芸的」な2つの要素
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