
フランスで日本食がブームになってから、長い年月が経ちました。現在ではラーメンを筆頭に、お好み焼きやおにぎり、餃子といったさまざまな料理をパリの街で味わえるようになりました。
混同される「GYOZA」。日本食を巡る文化的誤解
こうしたトレンドのきっかけとなったのが、1980~1990年代にフランスで巻き起こったアニメブームです。アニメの人気を機に、日本文化に関心を持つ人が急増し、その興味はやがて「食」へと広がっていったと言われています。現在では、日本の餃子が「GYOZA」としてスーパーでも売られているなど、一部の料理がフランスでしっかりと定着しています。ところが、筆者が見かけるのは、韓国料理店やベトナム料理店、タイ料理店などでも、この「GYOZA」がそのままメニューに並んでいる光景です。
日本文化に詳しい人なら違和感を覚えるかもしれませんが、そうでない人にとっては、それがその国の料理だと誤解されても無理はありません。こうした文化的な誤解は、実は餃子のほかにも、さまざまなケースが存在しています。
アジア食材がひとまとめに。フランスの「アジア食材店」

少しテイストは異なりますが、日本の「カルディコーヒーファーム」のようなイメージでしょうか。フランスのアジア食材店では、普通のスーパーマーケットでは見かけないような、珍しい調味料やスナック菓子、冷凍食品といった輸入食材が所狭しと置かれています。
もちろん、日本の食材だけを専門に扱うショップも存在はしますが、それは首都パリに数軒ある程度。ほとんどのアジア食材店では、それぞれのコーナーに日本・韓国・中国の商品が入り混じりながら並んでいて、商品のパッケージに書かれた文字が読めなければ、どこの国のものなのかを見分けるのは難しいのが現状です。
日本語が他国の製品パッケージに?

ただ、筆者が実際に見かけたのは、日本語と韓国語が併記された「パン粉」のパッケージでした。フランスでもパン粉は「PANKO」という名称で知られていますが、こうして併記されていると、どちらの国の食材なのか、フランス人消費者には判断がつきにくくなってしまいますね。

しかし近年では、中華料理店や韓国料理店でもそのまま“MOCHI”としてデザートメニューに並ぶことが増えてきました。スーパーでも販売されるようにはなったものの、MOCHIという言葉が日本語であることを知っている消費者は、決して多くはないかもしれません。
確かに、韓国や中国にも大福に似た伝統的なお菓子が存在します。ただ、MOCHIという日本語が独り歩きし、アジア全体のスイーツとして受け取られている現象は、ここフランスでは決して珍しくないのです。