開成合格の長男と「やめる」宣言のきょうだい。8人子育てオトクサ家が実践する学力差への向き合い方

8人きょうだいの長男が通塾なしで難関中学校へ合格したオトクサさん。現在は、次男・三男も同じ中学校合格を目指しているそう。しかし、きょうだい間で学力差は生じるもの。どのようにフォローしているのか、オトクサさんに伺いました。

同じように育てても異なる子どもの学力差イメージ
8人きょうだいを育てる保護者は、学力差をどうフォローしているのか
8人きょうだいの長男が開成中学校へ合格したオトクサさん。中学受験に関しては、基本的に子どもたち全員が挑戦する前提で、小学3~4年生になったときに本人の意思を確認すると言います。

もし途中で「中学受験をやめたい」と子どもが言い始めたときは、その意思を尊重するようにしているそう。実際に、三男は「中学受験をやめる」と言って、1~2週間ほどやめたことがあると言います。

「中学受験を継続するように親が諭すことはありません。でも、子ども自身が暇になるのか、きょうだいが変わらず勉強しているからか、結局は『やっぱりやる』といってやり始めましたね」
 
唯一、継続して中学受験を希望しなかったのは長女です。
 
「彼女が中学受験を辞めた理由は詳しく聞いていませんが、同じ学校の友達と遊ぶのが楽しかったからではないでしょうか。親としては、本人がやらないと決めたら、その意思を尊重するだけ。勉強は促さず、『何時に帰ってくる』といった基本的な生活のルールを大切にして育てました」

きょうだいで比較することで、自分の得意分野が分かる

性格1つとっても、きょうだいで違いがあることが伝わってきます。

勉強に関してもきょうだいで成績に差が生じると、保護者として思わず「なんでお兄ちゃんはできたのに、あなたはできないの!」と叱りつけてしまいそうですが、オトクサさんはむしろ「きょうだいで成績が違うのは当たり前」と子どもたちに伝えてきたと振り返ります。
 
「今は勉強ができない劣等感を抱えるというより、『自分の得意分野はこれだ』と子どもが認識してる印象を受けます。例えば、長男は勉強が得意だけど、走るのは僕の方が早いとか。自分ときょうだいの違いをさまざまなものさしで測って、勉強はそのものさしの1つという感覚だと思います」
 
しかし、「まだ下の子は小学生。これから先劣等感を抱く可能性はある」と語るオトクサさん。しかし、そうならないよう、成績の差が生じる背景には、どれだけ努力してきたか違いがあることを伝えるようにしていると言います。
 
「うまくいかなかったことに関しては、『お前の努力が足りなかったから仕方がない』と伝えることもあります。『塾なし』というと『地頭がよかったのでは』と言われることがありますが、長男はそれだけ勉強してきました。塾に通わない分、移動時間はありません。実際には塾に通う子と同等か、それ以上に勉強する時間は多かったと思います」
 
オトクサさんの子どもたちが模試や特別講習などで塾に通うと「塾の方が楽だった」と語ることが多いそう。移動時間がある意味自由時間だし、受け身で授業が進むから気楽なのだとか。
 
「とはいえ、塾なしだからと僕自身がマンツーマンでしっかりと子どもを見ているわけではありません。自分自身で1日のやるべきことや勉強時間の管理をできるように、小学4年生までに勉強習慣を身に付けさせました」

最終的には本人の通いやすい学校へ

開成中学校へ全員が通えるわけではありません。その際は、「通学時間がかからない学校で中学受験する予定」だと言います。
 
「僕自身は校風よりも通いやすさを重視しています。その理由は、中高の6年間にかかる通学時間を考えたら、とんでもない時間を費やすから。近くて通いやすく、電車を使う際は混んでいない方向へ進むのが望ましい。そのせいで偏差値が下がるとしてもかまいません。
 
学校説明会も、長男が小学5年生のときに開成の説明会へ参加したきりで、今後も特には参加しないかもしれないですね」
 
あくまで「合格した学校」に重きを置くのではなく、「子どもの努力」を基準に子育てをするオトクサさん。その視点は中学受験に限らず、子どもの受験戦争にのめり込みそうになる親の気持ちを引きとどめる1つの考え方となりそうです。
 
通塾なしで開成合格! 中学受験おうち勉強法
通塾なしで開成合格! 中学受験おうち勉強法

オトクサさん プロフィール
1981年大阪府大阪市出身。小学生の時、自ら志願し 中学受験に挑戦し、私立の中高一貫校である清風中学校へ進学。中学・高校は塾に通わずに大阪大学に現役合格。現在、妻と8人の子どもとともに東京で暮らしている会社員。長男が塾なしで中学受験に挑戦する様子をまとめた新刊『通塾なしで開成合格!中学受験おうち勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、子どもたちが自ら学び進めるための取り組みを、大家族ならではの日常を交えてわかりやすく伝えている。

この記事の執筆者:結井 ゆき江
フリーランスの編集者・ライター。中学受験雑誌の編集者として勤務した後に独立。小学校で発達障害グレーゾーンの児童をサポートした経験から、教育分野を中心にライターとして活動する。
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