恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第118回

【2025年6月引退】さよなら、カシオペア! 豪華寝台特急の思い出を懐かしの写真とともに振り返る

豪華寝台特急「カシオペア」が2025年6月末についに引退する。唯一無二の車両、運行スタイル、こだわりのサービスなど、その歴史と魅力を2007年当時の写真とともに振り返る。

7. 「カシオペア」のけん引機

EF510
発車前の「カシオペア」けん引機EF510形電気機関車。上野駅にて
「カシオペア」の客車には動力がない。そのため、機関車がこれを引く。上野駅から札幌駅にかけては、電化方式や非電化区間の違いから、複数の機関車がリレーして運行される体制である。

まず、上野駅から青森駅まではEF81形交直両用電気機関車がけん引していたが、老朽化に伴い2010年夏からは新型のEF510形500番台に切り替わった。このうち2両は「カシオペア」専用塗装機であったが、「北斗星」用の青い機関車がけん引することも珍しくなかった。

青森駅から函館駅までは青函トンネル用のED79形がけん引機として使用される。北海道新幹線開業による架線電圧変更を受け、2016年以降の団体専用列車「カシオペアクルーズ」「カシオペア紀行」はJR貨物の協力によりEH800形がけん引した。しかし、豪華列車「TRAIN SUITE 四季島」の登場により2017年2月に終了し、以後の「カシオペア紀行」は本州内、JR東日本エリアのみでの運転となっている。

函館駅~札幌駅はディーゼル機関車DD51形が重連(2両連結)でけん引した。
DD51重連
DD51形ディーゼル機関車重連で札幌駅を発車する「カシオペア」

8. 北海道の非電化区間

DD51重連
車両基地から札幌駅に到着する「カシオペア」。DD51形ディーゼル機関車が重連でけん引
北海道の鉄道路線は非電化区間が多いので、ディーゼル機関車がけん引した。厳密に言うと、函館駅~五稜郭駅(北海道新幹線開業後は新函館北斗駅まで)、東室蘭駅~札幌駅は電化区間であるものの、機関車交換の手間を省くため、電化区間であってもディーゼル機関車がそのまま直通している。

9. カシオペアのさまざまなグッズ

ペアカップ
カシオペア乗車記念のペアカップ。赤は現役で妻が使用中
カシオペアの乗車記念として、さまざまなグッズを車内で販売していた。筆者が購入したのはペアカップと傘だった。傘は筆者とともにテレビ番組にも出演したが、その後破損して現存しない。
傘
筆者が「タモリ倶楽部」(テレビ朝日)に出演したときの画像
ほかには、記念の袋やチケット袋など大小多くのものがあった。
チケットなど
ツアーのクーポン、シャワーカード、食堂車メニューなど

10. 時には迂回運転

迂回運転のお知らせ
「カシオペア」迂回運転のお知らせ
1編成しかない列車なので、運休になると必然的に翌日の折り返し列車も運転できなくなる。東日本大震災のような重大なアクシデントは別として、なるべく運休を避けるべく努力し、不通区間を迂回(うかい)することも時折あった。

筆者が妻と乗車した2003年7月26日も仙台付近の地震による東北本線の一部区間不通により、上越、信越、羽越、奥羽本線経由(日本海沿い)で迂回運転した。もっとも、大幅に遅延したので札幌到着は午後になり、後日特急券は払い戻しとなった。 
見送り
上野駅13番線を去り行く「カシオペア」
数々の思い出を残して引退する「カシオペア」。40年以上活躍する車両も珍しくはないけれど、「豪華さ」を売り物にしている以上、あまりの老朽化による不具合多発ゆえにサービスに支障をきたし25年ほどで寿命が尽きたということだろう。JR東日本エリアにおける豪華列車は「TRAIN SUITE 四季島」が引き継ぐことになる。
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この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
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