日本とは異なる、フランスの「美術館」のようなスタバ。店舗進出が日本より20年も遅かった理由

世界中で店舗を展開するコーヒーチェーン「スターバックス」は、カフェ文化が根付くフランスでも次々と新店舗が誕生しています。フランスの人々がどのように利用しているのか、日本との違いも併せてご紹介します。

パリのスタバ
パリのスターバックス(写真は筆者撮影、以下同)

世界中で店舗を展開するコーヒーチェーン「スターバックス」は、カフェ文化が根付くフランスでも次々と新店舗が誕生しています。フランスの人々がどのように利用しているのか、日本との違いも併せてご紹介します。

日本より20年も遅かったフランスへの進出

アメリカで生まれ、日本でもおなじみの人気コーヒーチェーン「スターバックス」。1971年の創業後、日本には1996年に上陸しましたが、フランスでの初出店は2015年と、ほかの国に比べてやや遅めでした。

というのも、フランスはコーヒー産業の売上高に最も貢献している世界トップ10の国の1つ。フランス人の年間平均コーヒー消費量は約3kgで、これは年間約500杯に相当します。

フランスはヨーロッパでも1、2を争うコーヒー大国。そんな国にアメリカ生まれのスターバックスが進出した当初、一部のフランス人からは抵抗や反発の声が挙がったそうです。実際、首都パリには既に約1500軒のカフェがありますし、「パリのカフェ文化」はユネスコ無形文化遺産に登録されるほど深く豊かな歴史を持っています。それだけに、フランスの人々は自国のカフェ文化をとても大切に感じていたのでしょう。

ライフスタイルの変化が逆風を起こす

パリのスタバのテラス
フランスでもスターバックスは増加傾向に
とはいえ、コロナ禍をきっかけとしたリモートワークの広がりで、フランスのスターバックスは一転して大きく成長しました。

しかし、これは「スターバックスでリモートワークをする人が増えた」という意味では決してありません。リモートワーカーも確かに存在しますが、実際には、コーヒーの「テイクアウト需要」がパリを中心に爆発的に増加したことが主な要因です。

日本では当たり前のコーヒーのテイクアウトも、かつてのフランスでは「コーヒーは陶器のカップで、座ってゆっくり飲むもの」という考えが一般的でした。特に年配の世代では、コーヒーを持ち帰るという発想自体がなかったのです。

ところが急速なオンライン化が、その習慣を一変させます。カップ入りのコーヒーを自宅やオフィスに持ち帰ったり、散歩がてらにベンチで飲んだり。タイムパフォーマンスを重視する意識の変化は、フランスでもこの10年で大きく進んでいます。

テイクアウトに特化した「コーヒーショップ」が人気に

パリのコーシーショップ
パリでは「カフェ」ならぬ「コーヒーショップ」が急増中
そうした意味では、パリでテイクアウトに特化した「コーヒーショップ」が急増しているのも納得です。コーヒーショップとは、テイクアウトを主軸としながらも、店舗面積が狭く、コーヒーのクオリティーそのものに力を入れた新しいスタイルのカフェのこと。Wi-Fiやコンセントを完備した店舗も多く、店内でPC作業をすることも可能です。

近年、パリではこうしたコーヒーショップが急激に増え、特に20~30代の若者を中心に大人気となっています。スターバックスは、まさにこの流れに乗ったと言えるでしょう。ライフスタイルの変化に伴い、コーヒーを楽しむ選択肢も大きな広がりを見せているのです。
次ページ
日本とどう違う? フランスらしい特徴を一挙ご紹介
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

編集部が選ぶおすすめ記事

注目の連載

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    知って得する! 青春18きっぷより安い「北海道&東日本パス」の賢い使い方

  • 世界を知れば日本が見える

    「多様性廃止」に向かうメタ、マクドナルドら大手企業。トランプ「性別は男と女だけ」がもたらす閉鎖性

  • ヒナタカの雑食系映画論

    映画『ショウタイムセブン』の阿部寛が「岸辺露伴」に見えた理由。フジ問題と無縁ではない問題提起も

  • AIに負けない子の育て方

    【中学受験2025】安全校が危ない? 親が知っておきたい最新受験事情と、直前期の心を強くする言葉