日本とは異なる、フランスの「美術館」のようなスタバ。店舗進出が日本より20年も遅かった理由

世界中で店舗を展開するコーヒーチェーン「スターバックス」は、カフェ文化が根付くフランスでも次々と新店舗が誕生しています。フランスの人々がどのように利用しているのか、日本との違いも併せてご紹介します。

フランスのスターバックスは日本とこんなに違う!

スタバのカウンター
スターバックス、パリ・オペラ店の様子
それでは、日本のスターバックスと何が違って何が興味深いのか。フランスらしさにあふれたその特徴を一挙ご紹介します。

フランスらしい豪華絢爛(けんらん)な内装

スターバックス・パリオペラ店
重厚なソファやテーブルも特徴的
まずは内装について。スターバックスはその国や地域の建築様式を店舗内装に色濃く反映させています。特にオペラ座近くに位置するスターバックス・オペラ店は豪華な内装が特徴で、高級ホテルや美術館にも引けを取りません。もちろん、全てのスターバックスがこのような豪華な内装というわけではありませんが、空間そのものを楽しめるという点では魅力的ですね。

植物性ミルクが豊富、フランスらしいメニューも

フランスならではのセット
フランスならではのセットメニュー
フランスでは「植物性ミルク」として、アーモンド、オーツミルク、ココナッツミルク、豆乳の4種類が用意されています。これはベジタリアンだけでなく、宗教的な配慮によるもの。また、ショートサイズのドリンクにパン・オ・ショコラ(またはクロワッサン)を組み合わせたフランスらしいセットも特徴的です。

商品名ではなく名前で呼ばれる

日本と大きく違うのは、注文時に必ず名前を聞かれること。名前はアルファベットでカップに記入されます。これにより、ドリンクの渡し間違いが起こりにくくなりますが、日本人の名前は聞き慣れないためスペルミスが生じてしまうことも。フランスでスターバックスを利用する際は、例えば「KEN」や「NANA」といった覚えやすいニックネームを用意しておくと便利かもしれません。

ちなみに、英語は共通言語として問題なく使用できます。スタッフの多くは基本的に2言語対応で、中には3言語以上話せる人もいます。地方では事情が異なるかもしれませんが、観光地のパリでは言語の心配はほとんど不要でしょう。

新作には飛び付かず、テラス席を好む

スタバのテラス席
春夏はテラスが満席に
さらにフランスの特徴として、「新作に飛びつかない」傾向が挙げられます。新しいものを試したがらない国民性もありますが、見ていると多くの人が「ラテ」や「カプチーノ」を注文しています。お気に入りのドリンクをリピートする傾向は、日本人とは少し異なるポイントかもしれません。

また、テラス席の人気が高いのも特徴的です。屋外での喫煙が許可され、湿気も少ないフランスでは、春夏にかけて店内よりテラス席が満席になることも珍しくありません。

PC作業がしやすい

スタバでPC作業
Wi-Fiやコンセントも完備
フランスのスターバックスはそのクラシカルな雰囲気とは裏腹に、PC環境が充実しています。PC作業をする人の数は店舗や時間帯によりますが、パリでは比較的よく見られる光景です。ただし、「スターバックスで勉強やテレワークをする」パリジャンはそれほど多くないかもしれません。

というのも、パリ中心部の店舗は観光客も多くにぎやか。落ち着いてゆっくり作業できる場所ではありません。また、パリでは学生向けの図書館や社会人向けのコワーキングスペースが充実しているため、利用者がうまく分散されていると言えます。

今後の店舗数は現在の倍に

フランス限定のマグカップ
フランス限定のマグカップ
そんなスターバックスは、2024年時点でフランス国内に248店舗を展開しており、今後5年以内に店舗数を倍増させると発表しています。約2000店舗を展開する日本には及ばないものの、これほど短期間での急速な出店はフランスでも珍しいことです。

事実、スターバックス・フランスは2024年5月、プレスリリースでこう発表しています。「私たちは、伝統的なフランスのカフェとはまったく異なる、“雰囲気”や“体験”を提供することを重視しています。顧客にはくつろいでもらい、数時間いてもいいし、飲み物を取りに立ち寄るだけでもいいと感じてもらいたいのです」

このようにフランスのスターバックスは、ドリンクだけでなく「新しい体験」を人々に提供しているのでしょう。現在では若い世代を中心に、たくさんの人々がスターバックスを訪れています。

この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
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