ヒナタカの雑食系映画論 第142回

2024年の「日本アニメ映画ベスト10」を勝手に作成! 1位は「劇薬映画」かと思いきや見るたびに好きになれた

2024年公開の日本のアニメ映画から選んだベスト10を紹介しましょう! さまざまなアプローチから歴史を塗り替える名作がたくさん誕生し、特に青春映画が大充実していたのです。(※画像出典:(C)2024「トラペジウム」製作委員会)

7位『ルックバック』(Amazonプライムビデオで見放題配信中)


絶賛された読み切り漫画を原作とした作品で、劇場公開当初は119館と中規模ながら口コミ効果もあって劇場数は増加し、累計興行収入は20億円を超えました。上映時間は58分という中編ながら、アニメのクオリティーと物語の密度が半端ではなく、小学校時代に新聞で4コマ漫画を連載していた自信家の女の子と、その漫画に憧れていた引きこもりの女の子との関係性は、とても愛おしいものとして映るでしょう。

その後に彼女たちが別々の道を選ぶシーン、そして日本で起きた重大な事件を連想させる、すべてを打ち砕く出来事……その無力感を目の当たりにするからこそ、創作物そのものの意義を感じられるでしょう。自らの意志での選択と望みが描かれる様は、同じく押山清高監督によるテレビアニメ『フリップフラッパーズ』でも一致していますので、そちらも併せて見てほしいです。なお、同じく藤本タツキ原作の漫画のアニメ『チェンソーマン』の劇場版『チェンソーマン レゼ編』も2025年公開予定です。

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6位『数分間のエールを』(各配信サービスで販売中)


ミュージックビデオ(以下、MV)の制作に情熱を燃やす高校生と、音楽の道を諦めた教師が出会う、原作のない完全オリジナルの青春物語です。MVの(主観的な)本質、ものづくりの意義と可能性、そして青春の交錯を68分のタイトな上映時間の中で、モノローグを多用し、ワクワクする見せ方でMVの制作過程を見せ、なおかつMVそのものでストレートかつ全力で感情を「ぶつけている」ともいえる内容です。

実際にMV制作集団「Hurray!」が作り上げ、劇中歌を手掛けたボカロPのVIVIが「似た境遇だった」と語るなど、作り手の気持ちや試みが劇中のキャラクターとシンクロしていることも重要でしょう。2024年は本作と併せて実写映画『ディア・ファミリー』や後述する『トラペジウム』と、夢に向かって努力した「先」、そして「人の心を動かす」ことに向き合った人たちによる傑作があり、特に本作での涙腺決壊のクライマックスは、一生忘れることはできないでしょう。

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5位『化け猫あんずちゃん』(2025年2月22日にBlu-ray&DVDが発売予定)


化け猫と女の子のひと夏の交流……と呼ぶには少しためらいのある、「借金まみれでろくでなしの父親に捨てられた」と思いこみ、たびたび舌打ちをしてやさぐれている女の子と、初めこそ適当のようで次第に彼女の気持ちに向き合おうとする中年の姿は、時にクスッと笑えて、時にほっこりと癒されたりもできるでしょう。『天然コケッコー』などでダメな大人や田舎を描いてきた山下敦弘監督の作家性が見事に生かされていました。

さらなる魅力は久野遥子監督が『花とアリス殺人事件』でも発揮した、実写をアニメでなぞって制作する「ロトスコープ」の手法。「自転車を盗まれて辺りを見まわし戸惑う」や「ゲームで遊んでいて小さくガッツポーズをする」など、「現実そのままの動き」をかわいい絵柄で楽しめることが大きな魅力になっていました。女の子とずんぐりむっくりとしたお化けという組み合わせから、『となりのトトロ』が好きな人にも大推薦します。

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4位『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章/後章』(各配信サービスで見放題配信中)


巨大な宇宙船が上空に浮かぶ東京での女の子たちの日常が描かれる作品で、原作漫画の連載当時から東日本大震災を意識していましたが、今ではコロナ禍の現実や、世界中で戦争が起こる世界の混乱も連想させるでしょう。原作者の浅野いにおが制作にガッツリと関わっていることもあり、美麗で細やかな作画や演出など、全方位的に見どころ満載な内容に仕上がっていました。

絶望的な状況に追い込まれる女の子の気持ちを痛切に描き絶賛された『前章』に比べ、『後章』は特に結末部分で賛否両論を呼びました。「世界の問題への立ち向かい方」をどう捉えるかで、大きく評価は分かれるでしょう。その上で、筆者は本作が絶望的な世界への諦観から転じた希望を示した物語であり、改めて大切にしたいと思えました。現在はAmazonプライムビデオで、映画では描かれていない場面があるテレビシリーズ版(全18話)も配信されており、その「第0話」から、映画を見た人には新たな感動と衝撃があることでしょう。

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