恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第111回

【要注意】羽田に行くはずが品川へ!? 武蔵小杉と京急蒲田…首都圏2大“迷宮駅”の絶望トラップ

1本のホームにさまざまな方面へ向かう電車が次々と到着する。行先をしっかり確認せずに乗ってしまうと、思わぬ遠回りを強いられることも。首都圏には、そんな複雑な構造を持つ駅が点在している。その代表格である武蔵小杉駅と京急蒲田駅を取り上げる。

【京急蒲田駅】慌てると乗り間違い必至

横浜方面
京急蒲田駅の3階ホーム。3番線は横浜方面行きが発着する
京急蒲田駅は品川方面と横浜方面をつなぐ本線と羽田空港へ向かう空港線が分岐する駅だ。単純に都心から横浜方面へ向かう電車と空港へ向かう電車しか発着していないのであれば、それほど困ることはない。ところが、横浜方面からやってきて、京急蒲田駅でスイッチバックして空港へ向かう電車が存在するので話がややこしくなってしまう。
2階ホーム
3階からエスカレータに乗ると、2階には品川方面行きのホームがある
京急蒲田駅は2層構造の高架駅だ。3階が横浜方面へ向かう本線(3番線)および空港へ向かう支線(1番線)の乗り場だ。1番線には羽田空港からやってきて、横浜方面へ向かう電車も発着する。
羽田空港行き
羽田空港行き専用の案内板。発車する電車は2階と3階に分かれているからややこしい
2階は品川方面へ向かう本線上り線(6番線)、そして4番線がある。単純な運行形態ならば、この4番線は空港からやってきて品川方面へ向かう専用の乗り場となるはずである。ところが、横浜方面からやってきて羽田空港へ向かう電車は線路配置の関係から、この4番線に発着せざるをえないのだ。したがって、同じ線路を品川行きと羽田空港行きが併用することとなる。
4番線案内
真逆の方向へ向かう電車が共用している4番線
行先を確かめずに電車に乗り込むと、羽田空港へ行くつもりだったのに、品川まで連れていかれる悲劇が待っている。運悪く、それが快速特急であれば次の停車駅は品川。搭乗手続きの時間に余裕がなければ、飛行機に乗れなくなる事態も想定されるだろう。

ホームの乗車位置には、品川方面への乗車位置と羽田空港方面への乗車位置が大きく書かれてはいるものの、発車間際に慌てて車内へ駆け込む人の目には留まらないのかもしれない。
乗車位置
誤乗を防ぐため、羽田空港行きと品川方面行きの整列位置は色分けされているが、初めてかつ慌てている人には目に留まらないかもしれない
結論として言えることは、羽田空港へ向かうのに、品川や横浜から何でもいいから京急に飛び乗って京急蒲田で乗り換えるのは止めた方がいい、ということだ。不慣れな人ならなおさらのこと、直通の羽田空港行きを待つべきだ。空港行きが出た直後であっても、京急蒲田駅での接続がいいとは言えないので、次の羽田空港行きを待った方が無難である。

なお、京急蒲田駅の2番線と5番線は優等列車を待避するときの普通列車専用で、横浜寄りに目立たなくひっそりと佇んでいて、空港方面へ向かう旅行者の目に留まりにくいので、ここでは触れない。

京急のアクロバット的な車両や列車ダイヤの運用は、鉄道ファン目線では興味深いものの、不慣れな利用者にとっては恐怖かもしれない。
最初から読む

この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    【要注意】羽田に行くはずが品川へ!? 武蔵小杉と京急蒲田…首都圏2大“迷宮駅”の絶望トラップ

  • ヒナタカの雑食系映画論

    2025年の幕開けにぴったりな「1月3日公開の映画3選」をレビュー! 史上最大規模のSFインド映画がすごい

  • AIに負けない子の育て方

    首都圏の中学受験「今年も厳しい」 志願者数増の人気校に見る、“難関大進学”ではない納得のニーズ

  • 世界を知れば日本が見える

    昭恵夫人はなぜ「日米関係のエモい状況」を作れたのか。石破首相が直視すべき「実力不足」の現実