同じホームにさまざまな方面へと向かう電車が発着。確認しないで乗り込むと大変なことに……。そんな迷宮のような駅が首都圏には複数存在する。今回は、その中から武蔵小杉駅と京急蒲田駅を紹介しよう。
【武蔵小杉駅】東京、品川、横浜、川崎、渋谷、新宿……どこへでも行けるのが仇(あだ)?
JR武蔵小杉駅(神奈川県川崎市中原区)は南武線および横須賀線の乗換駅だ。と、簡単に言ってしまうけれど、この乗り換えが一筋縄ではいかない。2つの路線が交差しているところにホームがあれば問題はないのだけれど、かつて横須賀線には駅がなかった。2010年になってようやく停車駅となったのだが、さまざまな理由から南武線ホームと横須賀線ホームはかなり離れている。 現状、3つほど長いエスカレータを経由する。その距離、南武線ホームの中ほどから約400m! 元気な人が速歩きしても6~7分。横須賀線のホームは15両編成の電車が停車するので長く、グリーン車や特急の指定席の位置が決まっていると、10分は見ておいた方がいいかもしれない。「成田エクスプレス」「踊り子」「サフィール踊り子」といった特急列車を利用する場合は、たっぷり乗り換え時間を確保しておかないと乗り遅れることもあり得る。
さらに横須賀線のホームには多方面への電車が発着しているので要注意だ。 3番線は横浜方面。横須賀線は、横浜、大船を経由して鎌倉、逗子、横須賀、久里浜方面へ向かう。湘南新宿ラインは横浜、大船を経由するが、大船で二手に分かれる。逗子行きは横須賀線に直通して鎌倉、逗子に至るけれど、東海道線方面の国府津、小田原行きは大船から別ルートとなるので注意を要する。どちらも車体の色は同じ緑とオレンジのストライプなので、行先をしっかり確認し、乗り間違えないよう気を付けたい。 さらに、相鉄線直通電車もある。こちらはヨコハマネイビーブルーの車体あるいは埼京線の車両が使われている。武蔵小杉を発車するとまったく異なる線路を走り、次の停車駅は羽沢横浜国大駅なので要注意だ。 4番線は都心方面。横須賀線の電車は次の西大井駅から分かれて品川、新橋、東京駅へと向かう。湘南新宿ラインは西大井を出ると横須賀線とは分かれ、大崎、恵比寿、渋谷、新宿と停車していく。西大井駅に停車しない快速電車もあるので留意したい。
8社局の電車が入り乱れる東急の武蔵小杉駅
武蔵小杉には東急の駅もある。こちらはJRとは改札口が別だ。ホームは2本で、それぞれ両面に電車が停車する。横浜方面のホームは、1番線が東横線の横浜、みなとみらい線直通、2番線が目黒線で日吉行、その先は東急新横浜線・相鉄線直通となる。 もっとも、1番線からも東横線の新横浜線・相鉄線直通電車が走っているからややこしい。東横線の電車が全て横浜駅に向かうわけではないから、よく注意しよう。 都心方面へのホームは、3番線が目黒線乗り場で、目黒から先、都営三田線直通の西高島平行きおよび東京メトロ南北線直通の赤羽岩淵行きや埼玉高速鉄道直通の浦和美園行きなどの2系統がある。隣の4番線は東横線乗り場だが、渋谷から東京メトロ副都心線に乗り入れ和光市行き、東武東上線直通の川越市、森林公園行き、小竹向原から西武線に乗り入れて石神井公園行きや小手指行き・飯能行きなど実にバラエティーに富んだ行き先が続々と発車していく。くれぐれも乗り間違えないようにしたい。 万一、乗り間違えても武蔵小杉まで戻る必要はない。複雑な路線網が張り巡らされている首都圏なので、迂回(うかい)ルートは幾通りもあるのだ。東横線に乗って横浜駅へ行こうと思ったのに、新横浜に着いてしまった場合は、JR横浜線あるいは横浜市営地下鉄ブルーラインで横浜駅へ向かうことができる。
東横線に乗って渋谷へ行こうと思ったのに、目黒線に乗ってしまった場合は、目黒駅でJR山手線に乗り換えるか、大岡山で大井町線に乗り換えて自由ヶ丘に向かえば、再び東横線に乗れる。目黒線の南北線直通に乗るつもりが、都営三田線直通に乗ってしまった場合、春日と後楽園は駅名こそ違うもののほぼ同じ位置にある乗換駅なので、ここでリカバリーが可能だ。じっくりと首都圏の路線図をチェックすれば回復策はいくらでもある。