3位:『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(12月13日より劇場公開)
日本で2024年5月に劇場公開されたデンマーク・オランダ合作映画『胸騒ぎ』を、アメリカでリメイクした作品です。その内容は「次第におかしいことが分かっていく家族のおもてなしに、居心地の悪さと不気味さを覚えつつも、気を遣ってしまって、なかなか逃げ出せない」様を追うもの。舞台やシチューションをしっかり再現する、誠実なリメイクの姿勢が見て取れます。

近年では特に狂気的な役で高い評価を得るジェームズ・マカヴォイがノリノリで恐ろしい役を演じており、特に中盤のとある展開からは「ただのリメイクには終わらせない!」といった作り手の気合がビンビンに感じられる内容となっていました。

2位:『Chime』(配信プラットフォームRoadsteadで独占販売・レンタル中)
45分の中編作品ながら、カメラワーク、音、役者の顔の全てが不穏で、展開は不条理。泣きそうになるほど、さらには「見る前には戻れない」ほど、世界の認識を変えるほどの恐怖を呼び起こす作品でした。直接的な殺傷描写のためにR15+指定がされていますが、中盤の「明確な理由がないまま一線を超えてしまうかもしれない」恐ろしさは、絶対に子どもには見せてはならないと思いました。
黒沢清監督作は、この2024年にリメイク作の『蛇の道』と菅田将暉主演の『Cloud クラウド』も公開され、そのどちらもまた犯罪に加担してしまう者たちの「加害者性」の恐ろしさを描いていました。画面のみならず人間の「闇」がじわじわと広がっていくような作家性が詰まった、黒沢清作の最高傑作が『Chime』だと断言しますし、あの「椅子」のシーンはホラー映画史上に残るでしょう。
1位:『サユリ』(DMM TVで独占見放題配信中)
同名漫画を原作とした作品で、何より話題を集めたのは中盤の「転換」(予告編でも示されているので視聴注意)。何も知らずに見ると、あまりのギャップに驚きつつも爆笑、知っていても「待ってました!」とばかりに爆笑が待ち受けるという「まさかのコメディー要素」も楽しいのですが、それ自体が「理不尽な事態に振り回せる日本のホラー映画」の「カウンター」にもなっていることが秀逸でした。
それでいて、R15+指定にも納得する恐怖描写の「ガチ」ぶりと、物語の完成度も並々ならぬものがあります。その先に待ち受けた、人間の罪、怒り、強さ、そして全ての感情をぶちまけたようなクライマックスとラストを見て、筆者は滝のように涙を流しました。ホラー映画というくくりを抜きにしても、きっと人生で大変なことが起こっても、この映画のことを思い出して少し勇気がもらえるだろう……そこまでの希望を与えてくれた、「全てのホラー映画の中でNo.1」と断言できる大傑作です。
まとめ:記憶に残るホラー映画、そして2025年の必見作も!
そのほかの2024年のホラー映画では、『毒娘』『オーメン:ザ・ファースト』『インフィニティ・プール』『あのコはだぁれ?』『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』『ニューノーマル』『デッドストリーム』『クワイエット・プレイス:DAY 1』『悪魔と夜ふかし』『ビートルジュース ビートルジュース』『憑依』『破墓/パミョ』『エルダリー/覚醒』『THE SIN 罪』なども忘れられないインパクトと面白さがある作品でした。そして、2025年に公開されるホラー映画の中で筆者のイチオシは、1月24日公開の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』。グロはなし、大きな音でも驚かさず、派手さもありませんが、「受け手の想像」を利用した恐怖に何度も身体中がゾワっとしました。日本のホラー映画の魅力を受け継ぎつつ、新たな可能性を見せつけた傑作です。
さらには、1月17日公開のダークなストップモーションアニメと実写を融合させた『ストップモーション』、1月24日公開の田舎の「掟」に追い詰められていく『嗤う蟲』、1月24日公開の韓国の実在の心霊スポットを題材とした『ヌルボムガーデン』、1月24日公開の辺境の村で起こる殺人事件を通して人間の醜さを描く『おんどりの鳴く前に』、2月21日公開の窓やドアが全て消えてしまった家に取り残された2人の子どもを追う『SKINAMARINK スキナマリンク』、謎の男に運転を強要された男が危険なゲームに巻き込まれる2月28日公開の『シンパシー・フォー・ザ・デビル』などが待ち受けています。
どれも怖くて面白そう……!その前に、12月13日より公開の『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』を筆頭に、この2024年の傑作ホラー映画も積極的にご覧になってほしいです。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。