7位:『他人は地獄だ』(11月15日より劇場上映中)
韓国の人気Web漫画を日本で実写映画化した作品で、上京した青年が格安シェアハウスで不気味な住人たちの恐怖に怯えるというストーリーです。極端な人物描写は、良くも悪くも現実離れした印象を抱く人が多いでしょうが、だからこそ「目が死ぬ」ほどに追い詰められる主人公の気持ちが痛いほどに分かる内容に。「自分の訴えを誰にも信じてもらえない」「自分が絶対だと信じていた認識までも揺らいでしまう」というホラーの定石もしっかり踏んでいます。
「刃物による殺傷・流血の描写がみられる」という理由でPG12指定がされていますが、そのレーティング止まりとは到底思えないほど、全編がグロテスクかつ理不尽な雰囲気に満ち、意図的に不快指数を高めにした内容なので鑑賞には注意が必要でしょう。ブラック企業の理不尽さもまた極端ながら容赦なく描かれるので、仕事を理由にメンタルが落ち込んでいる人には全くおすすめできません。その不快さを体感することで、とある展開には驚きと納得感も抱くはずです。
6位:『バーン・クルア 凶愛の家』(11月22日より劇場上映中)
こちらはタイ製のホラーで、経済的理由からマンションに引っ越した女性が、コンドミニアムを別の家族に貸し出した矢先に夫の不審な行動に気付き、少しずつカルト集団のおぞましい企みに近づいていくという内容です。母親が邪悪な力におびやかされる幼い娘を救おうと奮闘する様は『エクソシスト』を思わせますし、不安と恐怖が積み重なっていくスタンダードなホラーの定石にならっているのですが、……中盤からの展開が重要です。
テクニカルな構成は、とあるショッキングな出来事を伝える手段としても秀逸ですし、物語全般、特に意外な結末と見事にリンクしています。オカルト要素が強く、R15+指定にも納得する地獄のような状況が描かれる内容ながら、実話にインスパイアされたというのも驚き。身近にあるかもしれないリアルな恐ろしさもそこにはありました。12月現在も小規模で公開中ですので、ぜひ映画館の「逃れられない」状況で体感してほしいです。
5位:『テリファー 聖夜の悪夢』(11月29日より劇場上映中)
残虐非道なピエロの殺人鬼を描くシリーズの第3弾で、最大のセールスポイントは「R18+指定にも大いに納得する殺害シーンの残虐さ」。公式Webサイトの「鑑賞は自己責任で」や、ポスターの「全米が吐いた。」の触れ込みは伊達ではなく、特に終盤のアイデアは最悪、でグロ耐性が十分だと自覚している筆者でも「ウプッ……」となってしまいました(褒め言葉)。SNSでも「あれ映画館でやっていいんだ」「途中退場者を複数見かけた」などと話題となっています。
そんな内容ながら「子どもが殺される直接的な描写はしない」というモラルも貫かれています。実際の撮影では、子役たちを暴力やネガティブな描写から避けるように徹底し、トラウマや危害を与えていないかを確認するために俳優組合の関係者がセットを訪れていたのだとか。それでも冒頭から「子どもの惨殺後の死体」が写るのはショッキングですし、それすらも物語にうまくつなげる意地悪なアプローチにはもはや感心してしまいました。2作目『テリファー 終わらない惨劇』から直接的に話がつながっているので、先にそちらを鑑賞をしておくのがおすすめです。
4位:『エイリアン:ロムルス』(各配信サービスで販売中)
言わずと知れたSFホラーの金字塔である『エイリアン』。その初代監督であるリドリー・スコットが手掛けた『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』の評価は賛否両論でしたが、本作ではエイリアンという存在への「原点回帰」的な恐怖を追求しており、往年のファンも、初めてシリーズに触れる人からもおおむね大好評で迎えられました。
『ドント・ブリーズ』の監督らしいエッセンスがふんだんに盛り込まれつつ、過去の『エイリアン』シリーズのオマージュも込められているほか、独自のアトラクション的な見せ場もあるという、監督の作家性とファンサービスも両立したエンタメホラーとして、1つの完成形と言えます。本作を初めて見る人にとって、後追いでシリーズを見れば、『エイリアン』シリーズへの理解と敬愛も伝わるはずです。
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