「突然の中止」「空席ガラガラ」なイベントはなぜ発生する? 増え続けるK-POPアワードの“厳しい現実”

さまざまなアーティストが一堂に会するK-POPアワード。1度に多くのアーティストが見られるメリットがある一方で、チケット代の高騰やアワードの乱立に対する懸念の声も上がっています。その背景とは……。

うまくいかないK-POPイベントの裏にあるもの

ゆりこ:原因は1つではないと思いますが日本開催のイベントに限っていうと、うまくいかないイベントの裏には韓国側の「見切り発車」と日本側の「見立ての甘さ」がセットで存在すると考えています。お話ししようか迷ったのですが……今年の前半、ある失敗に終わったK-POPイベントの打ち合わせを偶然カフェで聞いてしまったことがあり、予想が確信に近づきました。

矢野:えっ、そんな重要な話をカフェでしちゃいけないのに。とはいえ、内容が気になります! どんな内容だったんですか? 差し支えない範囲でお願いします。

ゆりこ:まず打ち合わせに出ている日本側の人たちが出演者のことやファンダムの規模をしっかり把握していなかった。韓国側も情報をやや“盛り気味”かつ“曖昧”に伝えているように感じられました。そして開催まで日にちが迫っているのに、スポンサー周りの重要な部分も決まっていないというグダグダさでした。「その状態で成功させるのは厳しいだろう」と内心思いましたよ。何より隣に“K-POPオタク”が座っているかもしれない場所で、その打ち合わせはお控えください案件。リアルに「マックの女子高生が〜」ってやつですが、うそみたいな本当の話。

矢野:そして実際に結果も散々だったと。もしかしたら何か事情があってカフェで打ち合わせをしていたのかもしれませんが……ファンはコンテンツのクオリティーに対して鋭敏に反応するものだと考えています。何も粗探しをしようとしているわけではないのに、無意識的に脊髄反射的に“中途半端なところ”に気付いてしまう。ファンの目をごまかすのは容易ではないはずです。

ゆりこ:過去にイベント主催側も経験したことがあるので、いかに大変な仕事かも理解しているつもり。理想通りにうまくいったことなんて、ほぼないです。でも韓国側からの情報の“盛っている部分”“曖昧にされている部分”を丁寧に詰めて、“実際のところ”を浮き彫りにして把握するという細かい調整をしていくことで大事故は防げると思います。それを分かっている人がコアとなるスタッフにいるかいないか、周囲がその人の話に耳を傾けて受け入れる環境であるかがキーポイント。これは完全に裏側の話になりますが。

矢野:楽しみにしていたイベントがキャンセルになってしまうと、精神的にも物理的にも結構ダメージ大きいです。チケット代が戻ってきても、遠方からの参加であれば旅費は返ってこないこともある。この日を待ち焦がれていたファンの落ち込みは相当なものです。

ゆりこ:そのイベントに行くために、皆さん学校や仕事や家庭の中でスケジュールを調整して準備しているわけで。あと……これもお話しするか迷ったのですが言っちゃう。デイリー新潮の記事に韓国芸能関係者のコメントが掲載されていて、赤裸々かつ納得してしまう内容だったんです。
 

矢野:「K-POP業界の裏側」みたいなお話ですか?

ゆりこ:そこが記事の本題ではなかったのですが、「ライバル社が始めたものは、上司から“ウチはどうなってるんだ”と叱られる前に先手を打たねばならない」ゆえに「市場調査もまともに実施しないまま“日本で展開すれば儲かるはず”と強引に実行しがち」。加えて「チャレンジ精神にあふれる反面、リスク対策や緻密さに欠けることもある」という内容でした。このような韓国エンタメ企業の“社風”も否定できないと思うのです。


矢野:なかなか辛辣(しんらつ)ですね……。

ゆりこ:少し強めの言葉で書かれているとは思います。匿名だし、一個人の意見でしょ? と思う人もいるかもしれない。でも韓国企業で働いていた日々を思い起こすと、うなずける部分もあります。

矢野:韓国側も日本側もイベントを成功させたいという思いは同じはず。ただ、現在のK-POPイベントを取り巻く環境がいいものだとは決していえないでしょう。原点に立ち戻って互いに歩み寄る必要があるのかもしれません。

ゆりこ:もしかしたら連載始まって以来の毒吐き回になってしまったかもしれません。毎年K-POPのアワードや大型イベントを楽しみに参加しているからこそ思うこともあるよ、というお話でした。

矢野:さまざまアーティストが一堂に会するイベントはまるでお祭りのようで、会場全体が一丸となって盛り上がるあの瞬間は何にも代えがたいエンターテインメント。これからのK-POPイベントも楽しみにしています!

【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:韓国芸能&カルチャーについて書いたり喋ったりする「韓国エンタメウォッチャー」。2000年代からK-POPを愛聴するM世代。編集者として働いた後、ソウル生活を経験。

編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやメンズファッション記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)&MOA(TOMORROW X TOGETHERファン)。

<参考>
デイリー新潮「K-POP日本公演『ガラガラ』の衝撃 最高3万円『高額チケット』にファンも反発
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