2位:『ロボット・ドリームズ』(11月8日公開)
同名グラフィックノベルを原作としたスペイン・フランス合作の作品で、第96回アカデミー賞で長編アニメーション映画賞にノミネートするなど、とても高い評価を得ました。
最大の特徴は「全編でセリフもナレーションもなし」であることでしょう。物語は、孤独な日々を過ごしていた犬が、友達としてロボットを迎えるものの、離ればなれになってしまうというもの。物語そのものはシンプルで分かりやすく、前述した『こまねこのかいがいりょこう』と同様にセリフがないからこそ、キャラクターの表情や一挙一動から主体的にその心情を想像することで、むしろ感情が大きく揺さぶられるのです。
冒頭で描かれる犬の孤独な時間、ロボットが来てからの楽しい日々、それぞれを見ているだけで涙腺を刺激されますし、そんな2人を引き裂いてしまう描写といったら……!「この2人を幸せにしてあげて!」と心から願いたくなりました。
切ない中盤の心理描写は特に秀逸で、タイトルに「夢」を冠している理由がはっきりとした、とあるシーンにもハッとさせられました。音楽の演出も素晴らしく、特に日本人でも耳なじみがあるであろうアース・ウィンド・アンド・ファイアーの楽曲『September』の使い方、何よりクライマックスがあまりに素晴らしい!
誇張など一切抜きで、人生のどこかで「孤独」を感じたとしても、きっとこの先もこの映画を思い出して前向きになれるだろう……それほど心に残る映画となりました。パブロ・ベルヘル監督は「人生が素晴らしいのはさまざまなものを所有できるからではなく、それを誰かと分かち合えるから」とも語っており、確かにそれは全ての人が遭遇する孤独と付き合っていくための、とても大切な人生の捉え方だと思えるのです。
なお、パブロ・ベルヘル監督は日本のアニメ作品の大ファンであり、この『ロボット・ドリームズ』は「80年代ニューヨークに対するラブレターでありながら、日本のアニメーションに対するラブレターでもある」そうです。
実際にジブリ作品のほか、『パプリカ』などで知られる今敏(こんさとし)監督作品の影響もあり、『マインド・ゲーム』の湯浅政明監督作品にある「夢を見ているような世界観」も大いに参考にしていたのだとか。特に「関係性」を主軸にしたエモーショナルな表現の数々からも、日本のアニメからの影響を強く感じられるでしょう。