その公開を記念して、甥っ子、姪っ子と一緒に見ているうちに、この2年ほどですっかり『プリキュア』にハマってしまった筆者が、(昨年公開の『プリキュアオールスターズF』を殿堂入りとしつつ)独断と偏見によるプリキュア映画のベスト5を紹介しましょう。
『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』は大人の映画ファンにとってもよく名作が語られますが、今回の『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!』も含めて33作にもおよぶ映画『プリキュア』シリーズにも、大人がうなる、いや涙がこぼれる感動的な作品があることを、ぜひ知ってほしいのです。なお、いずれもテレビシリーズを見ていなくても問題なく楽しめますよ。
5位:『ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ』(2014年)
人形たちの王国でさらわれたバレリーナの少女を救うために戦う物語。かわいいキャラクターやアクションの作画などストレートにクオリティーの高さを感じられる作品ながら、明かされる「悲しい秘密」が子ども向けとしてもかなりヘビーなことに驚かされる内容です。
「戦っても解決できないことがある」「優しさが人を傷つけてしまうこともある」事実、さらに「不幸」に対する残酷なまでの本質を突きつけながら、「それでも」提示される希望に満ちたストレートなメッセージは、大人にこそ突き刺さるのではないでしょうか。
プリキュアシリーズは作品それぞれでテーマ(モチーフ)があり、「ハピネスチャージ」のタイトルが示すように「幸せ」を、さらには主人公の「キュアラブリー」の「愛」を、改めて問い直すように、欺瞞(ぎまん)を許さない形で映画で示したことに、作り手の誠実さをはっきりと感じることができました。
4位:『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』(2010年)
舞台は、「満月の夜にオオカミ男が現れる」といううわさが流れるフランス・パリ。プリキュアたちが傷だらけの少年の助けになるために奮闘するも、その少年の「父親」のような敵との愛憎入り乱れる関係が描かれる内容です。
こちらもダイナミックなアクションのクオリティーがとんでもなく、冒頭から映し出される広大なパリの街並みから圧倒されるでしょう、故・藤原啓治と大谷育江というベテラン声優陣が史上最高の演技を見せており、クライマックスの「構図」にも鳥肌が立つほどの感動がありました。
ただ、本作は大人からの絶賛の声が多い一方、雰囲気がかなりダークかつシリアスだったこともあり、公開当時から小さなお子さんにはあまり受けが良くなかったそうです。筆者の3歳の姪っ子も楽しくなかったようで、途中で見るのをやめてしまいました。しかし、そうした作風を受け入れられる、作品の奥深さを感じ取ることができる人はたくさんいると信じています。
ちなみに、辻村深月の小説『ハケンアニメ!』(マガジンハウス)の主人公の1人である女性監督は、本作で監督を務めた松本理恵をモデルにしているのだとか。松本監督は、ゲーム『ポケットモンスター』とバンド「BUMP OF CHICKEN」によるスペシャルMV『GOTCHA!』を2020年に手掛けており、こちらも絶賛されているので、さらなる活躍に期待したいです。