ヒナタカの雑食系映画論 第116回

「2024年夏に見てよかった邦画ランキング」を作ってみた。江口のりこの演技、インディーズ映画がすごい

2024年夏に公開された、またはこれから公開される邦画(日本実写映画)から、心から感動した、見てよかったと思えたベスト5を発表しましょう!(サムネイル画像出典:『愛に乱暴』より(C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024 「愛に乱暴」製作委員会)

1位:『侍タイムスリッパー』(8月17日より池袋シネマ・ロサで公開中)


現在は池袋シネマ・ロサのみで公開中という限定的な公開でありながら、上映開始すぐにSNSで絶賛の声が続々と届き、レビューサイトでも映画.comで4.7点、Filmarksで4.2点(いずれも執筆時点)とハイスコアを記録しているインディーズ映画です。

公式Webサイトのイントロダクションには「『自主映画で時代劇を撮る』という無謀」「初号完成時の監督の銀行預金は7000円と少し。『地獄を見た』と語った」などとつづられていることからも応援したくなりますし、実際の本編に「インディーズ映画にしては頑張っているよね」などとゲタを履かせる必要はありません。安っぽさは全くなく、劇中の殺陣(たて)も本格的で、続きが気になり、俳優たちみんなが熱演しているキャラクターみんなが愛おしいなど、心から「超面白い!」と思える内容になっていたのですから。

内容は「幕末の侍が現代の時代劇撮影所にタイムスリップして“斬られ役”になる」という分かりやすいもので、『テルマエ・ロマエ』のように現代のテクノロジーや文化に戸惑いながらも感動する「ギャップもの」の魅力もふんだんに盛り込まれています。特に、「テレビを見た時のリアクション」は、ギャップものの作品の中で一番面白いのではないでしょうか。実直な主人公が斬られ役に挑む、こちらも「仕事映画」の魅力がたっぷりですし、一方で“斜陽”になっている時代劇の事情も踏まえると、時代劇への愛情がたっぷり込められていることにも感動があるのです。

攻めているのは、ある種の「正しくなさ」を前提としたクライマックスで、(劇中でもその言及があるとはいえ)賛否を呼ぶポイントでもあるでしょう。しかし、それでもなお「こうしなければならなかった」感情もまた本作には重要なのだと、振り返って思うこともできました。5月に公開された『碁盤斬り』がそうだったように、「かわいいおじさんたちの友情」という要素を期待する人にも大推薦です。8月30日より川崎の映画館・チネチッタでの上映開始も決まっていますし、さらなる拡大上映も期待しています。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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