手術なしで性別変更報道に投げ掛けられるデマや差別。裁判所がきっぱり否定“合理的な理由なし”

広島高等裁判所が7月10日に決定を出した、手術なしでの性別変更を認めるという内容。LINE NEWSの号外でも取り上げられるほど多くの人の関心を集めていたようですが、今ネット上では、デマやヘイトの声が噴出しています。

トランスジェンダーフラッグを振る人々
トランスジェンダーフラッグを振る人々
広島高等裁判所が7月10日に決定を出した、手術なしでの性別変更を認めるという内容。LINE NEWSの号外でも取り上げられるほど多くの人の関心を集めていたようですが、今ネット上では、デマやヘイトの声が噴出しました。本記事では、大学の准教授のSNS発信や裁判所の判例を元に事実をお伝えします。

【実際の投稿:高井ゆと里氏、性別違和の正しい知識を呼び掛ける】

性別変更のニュース

手術なしでの性別変更を認める決定を出した広島高裁。性別違和の当事者が性別適合手術をせずに、戸籍上の性別を男性から女性へと変更できるよう求めていました。性同一性障害特例法の要件には「変更後の性器部分に似た外観を持つ」(外観要件)とする規定がありますが、外観要件は「違憲の疑いがある」とのことでした。

これに対し、ネット上では差別や誹謗(ひぼう)中傷の声があふれる事態に。特に「手術なしで性別変更できるとなればペニスをつけたまま女湯、女子更衣室、女子トイレにも入れるということだよね」などという誤った解釈が一人歩きし、ヘイトを加速させています。

群馬大学の准教授で、トランスジェンダーについての著書も多い高井ゆと里氏は、「拡散希望」と題し、「5号(外観)要件を適用しない形での戸籍変更が高裁で認められました。これを機に、しばらくのあいだ混乱した情報が飛び交うことが予想されます。(もうすでに、飛び交っています)」とつづり、正しい知識を啓蒙するポストをしました。

「それぞれが安全に生きられる道を模索しています」

まず下記のように、今回の決定の流れを説明した高井さん。

この判決は昨年の最高裁判決で4号(不妊化)要件の違憲を勝ち取った原告さんについて、決着していなかったご本人の戸籍変更を認めたものです。
5号について審理すべく高裁に差し戻し…という流れでしたが、昨年時点で、今日のような結論になることは明らかでした

続けて、

同一性障害特例法は(現在の)トランスジェンダーにあたる人たちが、戸籍に登録された性別を変更することを可能にする法律です。この法律に含まれてきた問題や、法制定の経緯、世界の状況などについては、『トランスジェンダーと性別変更』を読んでください。必読書です

と、自著『トランスジェンダーと性別変更』で正しい知識を身に付けるよう呼び掛けました。さらに、

戸籍の性別と、性器の特徴と、生活の実態と、それに伴って利用する性別分けスペースと…すべてが一貫している人には理解しにくいかもしれませんが、トランスの人たちには、戸籍の性別と生活実態が逆転しているたちがいます。特例法を必要とするのはそうした状況の人たちです

トランスの人たちは、自分たちを前提としない社会の常識・設備に囲まれながら、それぞれが安全に生きられる道を模索しています。トランスの人たちの生活と、戸籍と、性別分けスペースをめぐる(素朴な)疑問については、『トランスジェンダーQ&A』で徹底的に解説しました

と、トランスジェンダーの人たちが置かれている状況についても説明。自著『トランスジェンダーQ&A』で、「トランスジェンダーとは?」「トランスジェンダーの人たちが直面している困難は?」など、さまざまな疑問に答えているようです。最後には、

「この判決によって男が女湯に入り放題になる」とか「男性の陰茎を女湯で見せつけられる」と言っている人がいたとしたら、その人は嘘つきデマ野郎です。本人もそれが嘘だと分かってやっていますから、最悪です。調べれば2秒で分かることを調べさせずに恐怖を煽るのがデマゴーグのやり方です

と力強く表明しました。
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最高裁判所判例でも差別は許さず
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