JRの切符、みどりの窓口に頼らざるを得ないケース
1. 「一筆書ききっぷ」のネット購入は工夫が必要
JRの乗車券は距離が長いほど割安になるという遠距離逓減制が適用される。国鉄時代から引き継がれた制度で、遠くに行けば行くほど1キロあたりの単価が低くなる。それゆえ、「一筆書ききっぷ」というものが鉄道ファンや旅行の達人には広く知れ渡っていて、利用する人は少なからずいる。筆者も最近、北陸に行く時に往復でルートを変え、「東京→(北陸新幹線)→金沢→(北陸新幹線)→敦賀→(北陸本線)→米原→(東海道新幹線)→名古屋→(東海道新幹線)→東京」というルートのきっぷを購入した。
要するに「東京都区内発、東京都区内行き」という乗車券を購入したのだ(7日間有効で、都区内以外では途中下車OK)。ところがこれを「えきねっと」で申し込もうとすると、「乗車駅と降車駅は異なる駅を入力してください」と表示されてしまう。 少々考えて「乗車駅=上野、降車駅=東京、経由駅1=金沢、経由駅2=名古屋」と入力してみる。 今度は、「かがやき」「しらさぎ」「ひかり」「のぞみ」が選ばれたものの、合わせて4列車以上のため申し込みできないとのこと。工夫して3列車にしてみたものの、1日の行程となり、列車に乗るだけの慌ただしいスケジュールだ。いくら「乗り鉄」とはいえ、この行程はありえない。金沢や名古屋で途中下車し、宿泊してのんびり過ごしたいのだ。
それなら、いっそのこと、乗車券だけ申し込もうかと列車名を書かないで入力してみると、「条件を変えて再度検索してください」と表示される。諦めかけていたら、詳しい人に下記のように教えていただいた。
「新幹線・JR特急列車を探す」の枠の下にある「検索オプション」を開き、「新幹線を利用」および「乗車券のみ購入」にチェックを入れる。「乗車券のみ購入」なのだが、「新幹線を利用」のチェックを外すと、在来線は第3セクター鉄道区間があるため購入不可なのだ。こうして、1万3200円の一筆書ききっぷが「えきねっと」で購入できることがわかった。
とはいえ、これは割引なしの正規運賃であり、ジパング割引での購入は無理である。また、特急券を別途申し込むときには、割引購入証を複数枚使わなければならないのだが、これも窓口でしか対応してくれない。それゆえ、ネットでの割引購入を諦めて窓口に並んで申し込んだ。
2. ジパング俱楽部は今もアナログな手帳方式
また、JR全線の切符が3割引となる「ジパング俱楽部」(65歳以上限定)は、JR東日本&JR北海道の列車に関しては、大人の休日俱楽部カードを使ってネット予約や指定席券売機での申し込みができるけれど、他社(東海道新幹線を運行するJR東海など)の列車の予約は窓口でしか扱ってくれない。今やシニアでもネットを使える人は少なくないのだから、ネット予約も可能なシステムに移行すべきであろう。3. 人気の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」の予約
人気の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」の寝台券に関しても制約がある。「えきねっと」で予約できるのは、「ノビノビ座席」と呼ばれる雑魚寝スタイルの車両のみ。寝台券不要で特急券のみの席だ。これ以外の個室寝台は「えきねっと」では予約できない。JR西日本が運営する「JRおでかけネット」のサイトからであれば、個室寝台が予約できる。いわゆる「e5489」での発券となる。住んでいる場所がJR西日本のエリア内であれば、みどりの窓口や指定席券売機のある最寄りの駅で受け取りが可能だ。しかし、JR西日本エリア外、例えば首都圏在住の場合、受け取り駅が限られる。
以前はJR東日本の駅では不可能で、JR東海の駅ならOKだったが、2024年7月現在は、東京23区内の駅や北陸新幹線停車駅にある指定席券売機でも受け取り可能になっている。ただし、川崎駅や横浜駅では相変わらず受け取り不可なので、横浜駅からサンライズに乗車する人は、東京23区内の駅や東海道新幹線の停車駅である新横浜駅の窓口までわざわざ行く必要がある。
これが面倒なら、最寄り駅の「みどりの窓口」に並んで購入するのが簡単であろう。あるいは、旅行会社でサンライズ瀬戸・出雲に乗るツアーを探して、それに申し込む方法か……。
「えきねっと」は優しく教えてくれない
往復の乗車券と特急券を用意して、帰りの特急「ときわ」に乗車したら、その列車は臨時列車で終点は品川ではなく上野だった。東京駅で降りるつもりだったので、慌てたことはいうまでもない。 鉄道ファンであれば、列車番号や列車ダイヤに注目するであろうが、鉄道ファンではなく、用があって列車を利用する人はそこまで気にしないものだ。
「えきねっと」で予約するとき、水戸発17時台発車で検索し、最初に表示された列車を何の疑いもなくクリックしたという。これまで何回か同じことをしてきたのであるが、今回は金曜日だったので、金曜限定で運行される上野止まりの臨時列車が、いつも乗る列車の20分前に走っていたのが運の尽きだった。乗車券の行き先は東京山手線内だったし、支払金額もいつもと変わらなかったから全く「異変」に気づかなかったそうだ。
もし、窓口で購入するのなら、係員が「17時台の『ときわ』ですね。2本ありますが、どちらにしますか? 33分発は上野止まりなので、東京まで行きたいのなら53分発ですね」と聞いてくれるから、間違いが少なくなる。鉄道に詳しくない人が有人窓口に向かいがちなのは、こうしたダイヤの複雑さも一因だろう。